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本が生まれるまで 【書評再録】 | |||
●朝日新聞「著者紹介」欄(1994年9月4日)=出版業の内側が、経験に裏打ちされた言葉でつづられている。 「教育と出版は文化伝達の車の両輪だが、その教育がひどすぎる。偏差値で若者の感受性を殺している。熟読して行間を読むといった訓練ができていないようだ。きれぎれの情報を受け入れるだけでは“痴”の伝達ではないか。一方の出版物も、後世に残るものはごくわずか、クズを生み出しているといわれても仕方がない。若者が良書にふれなければ未来は細る。良書の灯はまもりたい」 優れたものへの一徹な意思が感じられた。 ●北海道新聞「著者訪問」欄(1994年10月16日)=過去に編集した本のことから紙、活字、印刷、装丁、書店など、編集を軸とした本が読者に届くまでの世界が「内側から」書かれている。「活発で意欲的、そして質問と疑問の人」であるべき編集者はまた「商人」であり「職人」でなくてはならない。その「反省の本」でもあるという。 ●週刊東洋経済評(1994年9月17日号)=本書で著者が語ろうとしているのは、思い出ではない。良書の出版に全力を尽くした人の体験と持続する志である。出版の自由と「国」、図書館、本屋街、印刷所、校正と翻訳、エージェント、広告、最近のCD付きの本など、出版全般について、著者は情熱を込めて語っている。 ●学鐙評=現場に生きてきた著者の出版哲学と本に対するつきない愛情がにじみでて、説得力ある出版文化論となっている。 ●出版ニュース評(1994年9月中旬号)=数多くの本を送りだしてきた著者が自らの体験をおりまぜ「本のできるまで」を綴っている。 ●新聞の新聞評(1994年9月13日)=小尾氏が編集を担当することになり、みすず書房「現代史資料」シリーズの始まりとなった「ゾルゲ事件」との出会いから、出版の自由と「国」、図書館、本屋街、印刷所、校正、企画、エージェント、造本装丁、広告、職業としての出版、読む本・見る本・聴く本--等について体験に基づいて綴られている。 ●國文學評(1994年11月号)=植字工にも印刷工にもなったかもしれない文学好きが、硬派の書店として今日に至るまで志を貫いてきたその全貌がこの本である。 出版体験談のみならず、出版人としての表現の自由についての一家言、印刷所との有効なるディベートの持続から、校正論、企画論、レイアウト論、造本装幀論、広告論に至るまで、出版人の全能力をあげての論考に圧倒される。長く座右に置いておきたい初志のある本だった。 | |||
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