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砂と雷鳴 【書評再録】 | |||
●毎日新聞評(1993年3月23日)=山口県東部の、瀬戸内海に面した光市を縦断する島田川の河口の不毛の砂丘、高州に、徳川時代に政策的に作られた1つの集落が物語の舞台である。祖父と孫の部落解放運動の歴史。
●赤旗評(1993年5月3日)=島崎藤村の「破壊」が明治初期の部落問題を、住井すゑの「橋のない川」が大正期にいたるそれを書いたのに対して、本書は激動の昭和期の部落問題をえがいた初めての作品である。 未解放部落に生まれ、辛酸をなめつくして成長し、部落解放運動の中で自己形成していく、その自らの半生を書きながら、それがそのまま作品になっているところに、本書のたぐいまれな特色がある。とりわけ高度経済成長期までの部落の生活が生き生きとえがかれている。特に全編をとおして部落の食生活が活写されている。極貧にあえいだ日本の庶民が、何を食って生きてきたかの貴重な証言でもある。 極貧のなかで、弟たち6人と子ども5人をたくましい生活者に育て上げていくそれは、子育て・教育の極意を語っているように思われる。 | |||
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