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斎藤茂男取材ノート2 地下帝国へ 【内容紹介】本書「まえがき」より | |||
土地と株を所有しているかいないか、それが人生の分かれ道だなどといわれる。たしかに近ごろ、上と下の所得格差は開くばかりで、上の人種はやたらとカネを持っているらしい。 先日、私の友人の新聞記者が、社用で十万円ディナーパーティーなるものに行ってきた。ブラックタイ、夫人同伴という本格的なやつである。円卓を囲む十人ほどの紳士淑女の間にはさまって、周辺を飛び交う会話を聞いているうちに、彼はびっくり仰天したという。 隣のA夫人はカナダで土地付き豪邸を2、3戸、お土産代わりにまとめ買いし、帰途ハワイに立ち寄って、買ってあるリゾートマンションで二、三日遊んで帰国したばかり。その隣のB夫人は、友人がケンタッキーで牧場を買ってきた話を披露しながら、 「あの程度でしたらお手ごろですもの、私でも買えそうよ。」 と言う。あとで聞くと、そのお手ごろの値段とは十億円だった。同じ円卓の夫たち同士は、もっぱらニューヨークのビルを買い漁る話に夢中。そんな光景に、彼は唖然とするばかりだったらしい。 カネ余りの金満飽食帝国の使徒・日本人はいま、世界中からいったいどう見られているのだろう。おそらくは、人間にとってかけがえのない「自由」「平等」「人権」といった無形の価値には目もくれず、ひたすら損得勘定を基軸にあわただしく動き回る裸の王様に見えているのではあるまいか。この「取材ノート」シリーズ第二巻に収録したのは、そんな忌まわしきカネ塗れ日本人像の由来とでもいうべきものである。 戦後、われわれは日本人の加害責任も、ましてその頂点にあった天皇の戦争責任も、すべて不問に付してきた。その過去と切り離せないこととしての“忌わしき現在”を見たいというねらいから、一見、脈絡のなさそうな疑獄事件をめぐる取材記録と、天皇問題にからむノートとをひとまとめにしてお目にかけることにした。 まずは日本地下帝国の現場へご案内することにしよう。 | |||
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