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戦後日本史と現代の課題

【内容紹介】本書「まえがき」より


 本書は、1995年11月18・19日の2日間にわたってパシフィコ横浜会議センターで行なわれた第三回近現代史フォーラム「戦後日本--その出発と21世紀への展望」での講師の報告とコメントをまとめたものである。
 「戦後50年」の節目にあたる1995年のフォーラムでもあり、近年急速に進んでいる「戦後史」研究の最新の成果を取り込みつつ、さらに新たな時代を展望するようなメッセージの得られる会にできないかと、フォーラム実行委員長の桶本正夫、五十嵐武士と私との間で何度か相談を重ねた結果、本書に見られるような構成でフォーラムを行なうこととなった。このフォーラム全体のねらいについて、私は当日のプログラムにつぎのように記した。

 第三回近現代史フォーラムは「戦後日本」をとりあげる。「戦後50年」の節目にあたるこの年に、われわれがこの50年にわたって生きてきた「戦後日本」をその出発点に遡って検証してみたい、これが今回のフォーラムの一つのモチーフである。
 「戦後日本」をテーマにとりあげたのは、もう一つの理由もある。それはわれわれが21世紀に向けて「新しい出発」を迫られているからである。日本はこれからどこへ向かおうとするのか、21世紀の世界の中でどのような役割を果たそうとしているのか、このような問いかけが外から投げかけられているだけでなく、われわれ自身が考えて選択すべき課題でもある。「新しい出発」の課題意識をもってあらためて「戦後日本」の歴史を振り返ってみたい、これが今回のフォーラム第二のモチーフである。
 「戦後日本」は1945年8月の敗戦とともに始まった。敗戦は「戦時日本」の清算の機会を与えるとともにこれに代わる「新日本の建設」の機会も与えた。「戦後日本」は「戦時日本」の残した課題の解決をいかに行ったのか、「新日本の建設」に目を奪われるあまり「戦時日本」の残した諸問題の処理をおろそかにすることはなかったのか、これらの問題は一つの論点となるだろう。
 「戦後日本」は何をなしとげたのであろうか、それは「新日本の建設」として当初から期待された目標であったのだろうか、さらに「戦後日本」を作り出した国際的・国内的条件はどのようなものだったのだろうか。「戦後日本」を「戦後日本」たらしめたものは何か、これらの問題も大きな論点となるだろう。
 来たるべき21世紀に向かって日本は何を課題として「新しい出発」を行うべきであろうか。「戦後日本」の遺産として何を引き継ぎ何を克服すべきなのであろうか。これらを検討することが第三の論点となろう。
 今回のフォーラムにも第一線の研究者を数多く迎えることができた。世代も専門も異なる論者の描く「戦後日本」像は一様ではないかもしれない。しかし、その論議はこれからの日本とわたしたち自身のあり方を考えるうえで、多くの示唆を与えてくれるだろう。

 ここに記さなかったことを若干付言すれば、講師の年齢構成に配慮し1920年代生まれから50年代生まれまでの異なる世代の研究者に参加していただいた。特に、将来の展望を論じる第四セッションでは若い世代の研究者に登場していただいた。また、国内の視点からだけみるのでなく、アジアやアメリカからの「外から」の見方が加わるように注意を払った。さらに、政治・外交・経済を主としてとりあげるセッションの構成としたが、それらの背後にある戦後の思想や文化の側面を重視して第二セッションでとりあげたことである。
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