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水道がつぶれかかっている

【内容紹介】●本書「本文」より


 「東京の水って、こんなにまずかったっけ?」
 何年ぶりかでニューヨークから帰国し、わが家に泊まっていった友人がいった。
 冷蔵庫に冷やしてある水を飲んでの感想だ。自慢にもならないが、わが家では、ほんの気休めに蛇口に取り付けた浄水器を通した水道水を、木炭を入れたやかんで沸騰させ、冷ましたものにも木炭を入れて飲んでいる。高度な浄水器は10万円以上もするし、ミネラルウォーターも毎日のことだから高くつき、しかもペットボトルというやっかいなゴミの山を積み上げるから、非常用以外は買う気になれない。
 それでこの努力なのだが、ニューヨークの生水よりまずいといわれたのは、ちょっとしたショックだった。そのうえ彼女は、「ニューヨークでは水道料金はほとんど払ってないよ」とのたもうた。いったいどういうこと?
 東京23区内のわが家の水道料金は、下水道料金も込みで2カ月に1回、銀行口座から4000円から7000円が引き落とされる。変則的2人ぐらしのせいと、選択にはお風呂の残り湯を専用ポンプで移して使うという努力の結果、これくらいに収まっている。
 そういう話をしたところ、都内で1人ぐらしの女性2人が口をそろえて、「安いじゃないの。私のところなんか1人で1回に4000円近い。単身者には割に合わない料金体系なのね」ときた。そのうえ、「徹底的に節水してみたことがあるんだけど、料金が少しも下がらないからバカバカしくなって、いまはじゃんじゃん使っている」そうだ。また、国分寺市に三人家族で住む主婦は、「あら、ウチなんか毎月12000円から3000円も払うんだから」という。
 やはり女性は払うことに関しては、なかなかウルサイ。が、この生活感に裏打ちされた目で世の中をウォッチングすることがじつはたいつなのではないか。この本では、徹底的に生活する者・支払う者の立場から水道料金や水道のしくみを見ていくつもりである。
 長いあいだ私たちは、日本の水はいい水だ、やわらかくておいしい水だ、と信じてきた。そして、水はタダ同然と思ってきたところがある。しかし、ここ10年くらいで急増したペットボトル水や浄水器の売れゆきを見るにつけ、そんな信仰が消えつつあることを実感する。
 おいしく安全な水を求めることに余計な出費をするようになったうえに、タダ同然と思い続けてきた水道料金も、実際には全国平均で毎年数パーセントずつ上がっている。
 良質な飲み水としては、多くの都市住民から見捨てられつつあるように見える水道水が、むしろこれから高くなっていくのだとしたら、どうだろう。それも、その負担から誰もが逃れられないとしたら……。なぜ、そうなるのだろう?
 本書では、私自身の関心のテーマである水源開発との関係に焦点を合わせ、そんな疑問に対する答えを探してみたい。
 毎日毎日、それこそ湯水のごとく消費している、身近な水という自然の資源。この唯一の国産エネルギー資源でもある水の開発や利用のされ方を知ること、それがどんな社会経済や政治のしくみの中で行われているかを明らかにすること。それが、この本で私が試みたいことである。
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