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愛することと働くこと 学校・家族・仕事をめぐる対話 【内容紹介】本書「はじめに」より | |||
表題の「愛することと働くこと」という言葉は、精神分析学者のフロイトが、晩年に「人生において大事なことは何か」という質問に答えたものである。そしてそれは、愛することと働くことだけではなく、その2つのバランスが大切であることをも含んでいた。つまり、愛することに支障をきたすほどには働いてはいけないし、愛することだけに没頭して働くことを忘れてもいけない、ということである。
では、私たちはどうだろうか。核家族・夫婦分業が一般的な中で、男性は働くことに没頭して、家族に関わることを避け、女性は愛することに没頭して、社会とのつながりを喪失したまま、その狭い世界に子どもを抱え込んでいる、ということはないだろうか。 いじめが起こるたびに、学校や教育の問題とされがちであるが、果たして私たち大人が、子どもたちにモデルとして示せるほど、仲良く協力的に生きているかどうかは、はなはだ疑問である。給料を渡すことで、父親としての全責任を果たしたつもりになっている男性は多いし、夫の薄給を嘆きながらも、経済的責任を分担しようとしない女性も多い。そのような中で、表面的には幸せそうに見えながら、夫婦関係が悪化している家庭も増えているのである。 戦後50年、高度経済成長をひたすら突っ走る中で、私たちが失ってしまった何か大切なものを毎日の生活の中で取り戻さないかぎり、子どものいじめや自殺、それに虐待の増加などの問題は、本当には解決しないのではないか、と思えてならない。 母親たちの育児ノイローゼや幼児虐待、あるいは子どもたちの不登校やいじめ、自殺などは、一部の特殊な問題と考えられがちである。しかし、この10年間ほど相談室や各地域の母親講座などで母親たちの訴えを聞いていると、もはや、誰にも起こり得る、一般的な問題となっているのである。この現状を、男性がどう考えるのか、それを聞きたかった。 当時、早期教育の取材をきっかけとして親しくなった保坂さんにも、その感想をぜひお聞きしたいと思っていたが、どうせならば、対談という形でじっくりということになり本書ができあがった。 | |||
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