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和牛経営の技術革新とサイレージ戦略

【内容紹介】本書「まえがき」より


 和牛は温和な性質を有し、山野草などの粗飼料の利用性が高く、さらに戦後、神戸ビーフの名に代表される優れた肉質は、脂肪交雑、肉色および風味など世界的に名声をあげるにいたった。これはこの間、和牛改良にあたった多くの先達の心血を注ぐ努力のたまものであり、歴史的に見ても大きな文化的所産である。これら和牛を、どう守り育てていくのかが今、大きな課題となっている。
 しかし、日本の経済発展にともない、牛肉の自由化、国内からの安全・美味で低コストな牛肉生産の強い要請と、和牛の歴史のなかでも、かつてない転換期をむかえている。
 世界に誇るわが国の工業は、オイルショックや円高に苦しみつつ、革新技術を導入して国際競争力をつけ、高品質な製品を低コストで生産することに成功している。その陰の涙ぐましい努力についてはいうまでもない。さらに、わが国の酪農経営では、早くから自給飼料の効率的な生産と貯蔵利用に着手し、短時日で規模の拡大に成功した。また、最近では牛乳消費が低迷し、生産調整が進行する状況下で、乳成分のグレードアップをはかり、牛乳消費に明るさをともしたことなどは高く評価されている。
 和牛経営も、今後は諸外国との競争ばかりでなく、国内主産地間の競争が子ウシの質なり、牛肉の質と価格なりをめぐって激化しよう。いままで、新しい技術の受け入れに保守的であった和牛経営であるが、各地域において肉牛農家、研究者、技術者および行政が一体となって、古い現場技術を早急に革新することが重要である。
 本書では、土地利用型で自給飼料を基盤とする競争力のある和牛経営について、多頭化と低コスト生産の技術戦略を具体的に提言した。わが国は先進畜産諸国に比較すると、1頭当たりの飼料畑面積がいちじるしく狭く、しかも夏季間は高温・多雨・多湿であり、その環境に適合した技術を創出しなければならない。
 自由化を前に、和牛農家は技術武装が必要であり、その大きな技術の一つにサイレージがあげられる。本書が内憂外患の時代に、和牛経営の安定的発展に、少しでもお役に立てば幸いである。
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