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シャーマンの弟子になった民族植物学者の話

【内容紹介】●本書「序--リチャード・エヴァンズ・シュルツ博士(ハーヴァード大学植物博物館)」より


 熱帯雨林は非常に独特の魅力をもち、かつ、とても複雑な世界である。そしてまた、私たちの住むこの惑星の上でもとりわけ美しい場所だ。そのアマゾンについて、われわれがなかなか理解できない領域は多々あるが、そのひとつが、森のインディオと植物との緊密さだ。異文化と接触していない先住の人たちは、純粋に科学的な調査に対して、しばしば非常に関心を示し、喜んで協力しようとしてくれる。インディオの「奥義」、ことに動植物に関する神秘的な知識は、むりやり聞き出さなければ決して明かしてもらえないと広く信じられているけれども、それはだいたいにおいて誤った思い込みだ。
 マーク・プロトキンは、きわめて誠実な態度で現地の人びとに接している。インディオから学ぶ気持ちをもったマークは、首尾よく植物を採取しただけでなく、儀式や祭礼などにも参列させてもらい、他所者にはめったに味わえない経験をすることができた。
 この本について、特に指摘しておきたい魅力がある。何千年来アマゾンのインディオたちに受け継がれてきた先祖伝来の暮らしを、ほぼそのままの形で見ることのできる民族植物学者は、マーク・プロトキンの世代で最後になるだろう。植物性の毒を塗った矢を番えた弓を持つふんどし姿の男たちと獣を追って森を駆け抜け、椰子の葉を葺いた小屋で病人を癒す呪医に出会い、女たちががりがりとカッサバを挽く音が村じゅうに響き渡り---こうした情景や背景音は、19世紀の博物探検学者たちの手記を髣髴させる。マークはこの懐かしい風景を、現代の読者の前に心憎いまでに生き生きと描き出してみせてくれた。
 環境がとてつもない勢いで破壊され、人口が目の回るような勢いで増えつつあることを考えると、熱帯雨林と、その周辺に暮らす人びとのこわれやすい文化を保護するためには、少なくとも今世紀末までにはなんらかの手を打たなくてはならない。作家としての才能と科学者としての洞察力に恵まれた著者の手になる魅力的な本書は、熱帯雨林保護のために大きな役割を果たすことだろう。マークは、熱帯雨林とそこに住む人びとが存在することの意味の重さを、人の心を動かさずにはおかない、痛切な言葉で訴えかけている。したがってこの本は、植物学、民族植物学のみならず、人類学、熱帯医学、シャーマニズム、そして熱帯地方の環境保護に関心のある方ならどなたにも読んでいただきたい傑作になっている。
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