第1章 スローな暮らしを送る南の島から
1 スローライフ大国・キューバ
■モノが溢れて貧しいというパラドックス
■スローライフに不可欠な国家ガバナンス
■持続可能な島国から見えてくる豊かなスローライフ
2 地球サミットから持続可能な開発へ
■リオ・サミットで最高評価を受けた小国
■憲法を改正し持続可能な国づくりをめざす
■二〇〇一年、世界環境デーのホスト国に
■経済崩壊の中での持続可能な社会づくり
■二一世紀の持続可能な社会のモデル
第二章 住民が住み続けられる山里づくり
1 野鳥さえずる山里〜ラス・テラサス
■山中のパラダイス、ラス・テラサス・コミュニティ
■コーヒープランテーション開発とその荒廃
■六○○万本の植林で「新しき村」を作る
■野生生物の宝庫ロザリオ山地
■ユネスコの生物圏保存地域に指定
■山里の暮らしと自然保護とを調和させる
■経済危機を契機にエコツーリズムを展開
■海外交流で地元に金を落とす
2 よみがえったカウト川----河川再生プロジェクトの女性たち
■五〇〇万本の植樹を達成した森林農場プロジェクト
■プロジェクトの中心を担った女性たち
■ヨハネスブルク・サミットで国連賞
3 沙漠化との戦い
■第六回国連沙漠化防止会議の開催国に
■動き出した沙漠化と干ばつ対処全国プログラム
■塩害と闘う荒野のソーラー・パネル農場
■サボテンが広がる沙漠地帯に森を作る
■生きるためにつくられたの三万ヘクタールの人工林
■三〇〇〇ヘクタールの塩害土壌を回復
■国連環境計画の沙漠化対抗プロジェクトで受賞
4 森を失ったコロンブスの楽園
■密林に覆われた島の発見
■住民の虐殺と伝統農法の消滅
■サトウキビの島への変貌
■アメリカ支配による森林破壊の加速
5 ゲリラたちの森林再生運動
■森林再生に乗りだした革命政権動
■管理を怠った植林運動
■土地条件を無視した強引な植林
■森林を破壊したソ連式大規模農地開発
■なんともチグハグな森林政策
6 経済危機で始まった林政改革
■エネルギーと木材を輸入して森林を増やす
■石油ショックで急増した薪需要
■全国森林行動計画を策定し、林政を再評価する
■伐採に大臣許可を要する新森林法の策定
■国家環境政策に森林マネジメントを位置づける
■山村住民と林業者が儲かるための資金援助
7 山人の暮らしに役立つ研究所と大学
■八〇年代から研究が進んだ林間放牧
■必要な伝統的な智慧の復活
■バイオマス利用の森づくり
■意識の高いキューバの学生たち
■持続可能な山村開発のための技術者養成
■自給有機農家の豊かな暮らし
□コラム1・恐竜絶滅とキューバの葉巻
8 山林集落開発がうまくいくわけ
■山村地域の総合開発プロジェクト
■一般市民を巻き込んだ国民緑化運動
■人々が山で暮らしていける生活基盤を整える
■これ以上、人は入るべからず
■スローライフを満喫する山村の農家
■平地でも進む植林運動、サトウキビ農場での自然再生事業
■森林認証制度の導入へ
第三章 有機水田にトキが舞う1 カリブの宝、サパタ湿地
■釧路湿原からはじまったラムサール条約への参加
■カリブ海最大の自然地域、野鳥の楽園
■革命後の再植林運動と自然保護が湿地を守る
■地元住民を参加させない自然保護行政の失敗
■住民参加で自然を守る自然保護への転換
■持続可能なペースで資源を使うことが自然を守る
■自然エネルギーを利用して住民の暮らしを高める
■カナダよりも四〇年は進んだ住民環境教育
□コラム2:サパタのヤシ
2 有機水田を舞うトキたち
■野生動物の天国、ビラマス湿地
■野鳥と湿地と水田とのダイナミックな関係
■有機農業への転換で急増したトキ
■鳥害対策を超えて〜農民や学生への環境教育
■野鳥保護に水田が果たす役割の研究で国際賞を受賞
■トキ保全を通じて世界と交流をはじめたキューバ
□コラム3:ラムサール湿地
3 マングローブとダムとの深い関係
■海洋生物のゆりかご
■地球温暖化防止と洪水予防に役立つマングローブ
■開発で失われたマングローブ
■環境を整えれば自然に回復するマングローブ
■換金作物生産のために国中にダムを作る
■国土を荒廃させたダムラッシュ
■ダム建設への反省と河川放水
■全国流域委員会による流域の一貫管理
■ダムから森への思想転換
4 利用することで水産資源を守る
■石油依存型遠洋漁船団とその崩壊
■漁業組合の創設による民営化と市場原理の導入
■乱獲防止と持続可能な水産業開発へ
■DNА分析とモニタリングでウミガメを調べる
■食の文化を守ることが資源保全につながる
■経済封鎖の一貫として貿易を禁じられたウミガメ
第四章 暮らしと密着したバイオ技術1 微生物で石油汚染を防ぐ
■アメリカのタンカー事故で動いた世界の海洋汚染対策
■海洋研究の総本山〜海洋研究所
■二〇〇種以上の石油分解バクテリアを見つけだす
■一〇年間、各地の事故処理に成果をあげる
■環境保全に燃える若き研究者たち
□コラム4:自然生態系を利用した浄化システム
2 緩速ろ過法でおいしい水を自宅でつくる
■全国民の九五パーセントに安全な水道水を供給
■経済危機で麻痺した水道システム
■緩速ろ過フィルターで水道水を浄化
■コミュニティを組織化する底力
■アンケート調査で実態を把握した上でフィルターを導入
■コミュニティ自らの手で水質を守る
■スローな水を飲むキューバとアメリカ流の効率技術を推進する日本
3 生ゴミはミミズで堆肥に
■生ゴミ減量にミミズを活用するアメリカ西海岸
■学校の環境教育で活躍するミミズたち
■工業的にミミズを大量生産するパイロット
■コミュニティ運動としてミミズで生ゴミを堆肥化
■食料危機の最中に普及したパーマカルチャー
■老人たちの生きがい運動
■コンクリート都市を緑に
□コラム5・オンボロ自動車とエコデザイン
第五章 環境と調和した国づくりのしくみとは1 公害を産んだ環境保護委員会と旧環境法
■環境保全委員会と環境法第三三条
■現実的な規制力を欠く環境法の限界
■不十分だった環境保全委員会の権限
■遅れたソ連の技術が引き起こした公害問題
■経済危機がもたらした明暗の劇的変化
2 科学技術環境省の設立と環境法の制定
■科学技術環境省の誕生
■トップダウンで命ぜられた持続可能な開発
■国家環境戦略の策定
■開発か環境か?環境法制定をめぐる交渉
■環境法で明記された環境保全手法
3 環境アセスメントと土地利用計画
■アメリカが先陣を切ってはじめた環境アセスメント
■環境アセスメントで不可欠な代替案
■アメリカよりも実施効力のあるキューバの環境アセス
■戦略的環境アセスを可能とする土地利用計画
■すべての土地利用で環境に配慮する
■必要な土地利用計画との連携強化
4 リゾート開発の失敗から海岸保全へ
■危機に瀕する世界の海岸
■海岸線の約半分が人工化した日本
■観光否定から観光リゾート立国へ
■島を結ぶ石の舗装道路
■生態系バランス崩れて大量の生物が死滅
■海岸の自然環境を守る海岸法
■セットバックによる観光開発規制
■小離島や岩礁の保護とエコツーリズムへ
□コラム6:サバナ・カマグェイ群島
5 生物多様性の保全する国立公園ネットワーク
■豊かな生物多様性
■保護地域を指定し、絶滅危惧種を守る
■全国保護地域ネットワークの形成
■不十分だった自然保護
■生物多様性保護のための国家戦略と行動計画
■生物種のリストアップと保護種指定
■絶滅危惧種を回復するためのしくみ
■世界の先端をいく生態系そのものの保全規定
■ゾーニングを持った自然公園管理
■自然公園管理のためのエコツーリズム
□コラム7:キューバのワニ
6 環境教育と革命防衛委員会
■開発優先の政治を変える鍵となる市民参加
■市民参加と情報公開については未熟なキューバ
■進んだ科学教育と遅れた環境教育というアンバランス
■専門分化していた科学技術
■環境教育に力を注いで国連賞を受賞
■高まる市民の環境意識
■活発化する市民NPО活動の波
■最大のエコロジー団体、革命防衛委員会
■NPО市民社会は本当に環境に優しいか
□コラム8:キューバのメーデー
第六章 スローでファジーな国家ガバナンス1 反グローバリズムの胎動---ポルト・アルグレからハバナへ
■世界食料サミットのスター、カストロ
■グローバル化に反対をはじめた市民たち
■世界初の市民手づくりの国際食料サミット
■グローバル化を痛烈に批判するハバナ食料主権宣言
■小規模な農家や漁師を守ることが食料確保につながる
■食文化の多様性と有機農業、もう一つの世界は可能だ
■カストロの閉会発言〜飢餓なき世界は可能だ
■遺伝子組み換え農産物の推進をうたった第二回食料サミット
□コラム9・キューバ流・玄米菜食
2 反グローバルから地域自給へと向かう途上国
■相次ぐ中南米での左翼政権の誕生
■キューバのオルガノポニコが導入されたベネズエラ
■近代農業の崩壊で三〇〇万人が餓死した北朝鮮
■国際平和秩序にも寄与するキューバの有機農業
■「足るを知る」経済を推進するタイ
■ヨハネスブルク・地球サミットで孤軍奮闘したキューバ
■批判されるカジノ経済
3 自然と調和していた江戸のガバナンス
■グローバル貿易経済国から鎖国した日本
■革命家、朱元璋が夢見た自給自足国家
■史上初のグローバリゼーションの引き起こした弊害
■国土復元のための大植林運動
■里山と杉山の原風景の誕生
■山林資源をコミュニティで管理する
■わざと堤防を切ることで人馬を守った伝統治水
■山林と一体のものとして海洋資源を管理する
■江戸の優れた海洋資源マネジメント
■野生生物と共生していた江戸
■自立コミュニティ「ムラ」
■搾取と飢餓にあえぐ江戸時代のイメージは正しいか
■スローライフを満喫していた江戸の農民たち
□コラム10:子どもを大切にする国
4 エピローグ・職人国家を超えて
■技術職人大国の限界
■ソ連文化からの自立がベースにあったキューバの改革
■カストロの見る夢
あとがき
参考文献