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武士道 日本人の魂

【書評再録】


●日本経済新聞「読書日記」岩城賢・ソニー生命社長(1998年11月8日)=フジモリ大統領の古武士的風ぼうを見ていたら、30年前に米国カリフォルニアで知り合った日系一世の方の面影と重なった。私の英会話の先生の父親で、大正時代に米国に移民した方である。
彼は太平洋戦争が始まるとともに日本人収容所に入れられた。すでに米国市民なのに日本生まれであるがゆえに収容所に監禁されたのだ。熱心なキリスト教徒の彼を支えたのは「聖書」、新渡戸稲造の「武士道」、内村鑑三「代表的日本人」の3冊だった。
海外に移住した明治人たちが武士道精神を心の支えにしていたことは興味深い。これがきっかけで私は「武士道」を読んだ。
戦後最大の挫折を経験した日本人は伝統的価値観の見直しを始めている。

●日本経済新聞「春秋」欄(2000年8月30日)=▼クリスチャンの思想家がおよそ百年前に英文で刊行した『武士道』は正義や勇気、慈悲など西欧の騎士道に対応した平和を仲介する思想として国際社会に大反響を呼んだ。「日本人の魂」という副題で伝統の中から探った普遍的モラルのテキストだった。▼雪印事件が発覚した際、追及を受けたトップは「私は寝てないんだ」と述べて失笑を買った。かつての日本の組織を支えた「義」や「誠」の観念はひたすら内向きの保身の道具になり、モラルハザードというカタカナの助けを求める。危機に直面した組織のふるまいが問われるとき、時代の美徳を問いかけた一世紀前の日本人のことを考える。

●週刊金曜日評(1999年3月26日号)=日本人の精神土壌に根ざした文化を保持してこそ、世界に愛され尊敬される日本がありうると、明治の先覚者は、現代の日本人に語りかけている。
タイトルは『武士道』だが、これは決して偏狭なナショナリズムを称揚するものではない。経済至上主義によって失われたものが何かを示し、いかにそれらを取り戻すべきかを教えてくれている。

●家庭の友評(1998年11月号)=この一冊は、国家百年の大計に資する現代日本人の教育の基盤を示した光人の尊い書である。維新のあと外国人にわかるように英語で記された「日本人の魂」がそれまでいかに培われたかを語った原著者の心がわかりやすい訳を得て、今後の道徳・実践教育の道に光が当たった想いがする。祖先の魂が、私たちにこれからどう歩むべきかを教える。
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