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武士道 日本人の魂

【内容紹介】本書「訳者まえがき」より抜粋


 セオドア・ルーズベルト大統領がこの「武士道」を一読して深く感動し、これを買い求めて知友の誰彼に贈呈していたという話は広く知られている。
 「武士道」は1899年フィラデルフィアで刊行され、次いで日本でも8版を重ね、アメリカ版、イギリス版も同時に10版を重ねた。やがて英語世界での好評を受けて、マラーティ語、ドイツ語、イタリア語、ポーランド語、ノルウェー語、フランス語、スペイン語などによる翻訳が次々に現れ、広く世界各国で迎えられたという。
 新渡戸稲造は、彼が若き日に幻として心に抱いた「太平洋の掛け橋」に見事なり得たと、私は思う。しかも、その掛け橋は、当初彼が幻とした掛け橋を、はるかに上回る規模になって実現したと言ってよい。だが、われわれ日本人キリスト者としては、むしろ新渡戸の「キリスト受容のあり方」という面で彼の生涯に注目することが大切だと思う。
 もし、「何を今さら武士道なのか?」といった疑念を差し挟む読者がおられるのであれば、ここで次のような武田清子氏の言葉を味わってほしい。
「新渡戸の関心は武士道にあったのではなくて、日本民族の文化、思想その考え方や生き方の中にあるものを大切に掘り起こし、そこにある生命をさらに前向きに新しい価値実現への歴史形成力たらしめることだったと言っていいのではないかと思う……彼は日本の精神的土壌から、すなわち、人々のふところから価値的萌芽を掘り起こし……それを新しい価値にと質的革新をもち来らせようとした……彼は平凡なる民衆をしてほんとうに人間らしい人間として互いに尊びあえる平和の民として自覚的たらしめる「平民道」の形成・確立に努めた。それは精神的デモクラシーともいうべき「平民道」のイメージであった。」
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