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里山の自然をまもる

【書評再録】


● WWF評(2002年5月号)=「里山」という言葉が自然保護のキーワードになったのは、市街地が郊外の緑を侵食しはじめて数十年近く経ってからのことでした。里山は、農業の衰退とともに開発の対象にされた貴重な自然環境だったのです。
しかし、里山の遷移のなかで独自に生息する生き物の存在や、私たち人間が里山から受けてきた少なからぬ恩恵を思い起こしてみれば、今むしろ、「共生の場」としての里山の価値に注目し、その在り方をこれからの社会づくりに役立てていくべきことに気が付くでしょう。
里山とは何か、それをいかに保全し、また保全してゆくことの意味は何なのか。本書とともに考えてみてください。

●日本農業新聞評(1993年9月1日)=最近、自然保護のキーワードになっている里山。それは、農業と農民の生活を支えた舞台装置を備えたものであった。また、素朴でありふれた里山の自然は、とても大切なものでもあった。この里山を、多様な生物が共生する自然環境としてとらえ直し、その生態と人間との関わり合いの中で、環境の復元と活性化を図ろうとするもの。

●全国農業新聞評(1993年)=自然保護のキーワードになっている里山を開発の対象にしてはならないと訴える。
里山を多様な生物が共生する自然環境としてとらえ、自然の復元と活性化を図る手法と位置づけている。
オオムラサキやギフチョウの望ましい管理法、カブトムシの役割や雑木林の多様性、湿地と植物の保全なども、わかりやすく解説している。

●教育新聞評(1993年6月17日)=「里山を守る」というと、現在残っている里山に線引きして手をつけないようにする「天然記念物的発想」か「造園的手法」で自然公園を造成・維持することをイメージしやすい。しかし大切なのは、「里山の多様性に富んだ自然を守る」という視点である。
本書は、この文章が示す通り、自然環境をいじりすぎるのではなく、かといって、放りっぱなしにするのでもない、人間がどのように里山とつき合っていくことが望ましいかについて、様々な角度から述べられたものである。
具体的なサゼッションも豊富であり、環境教育の一助としても有効な一冊である。

●理科教室評(1993年10月号)=失われた里山の自然への郷愁からか、私はこの本を興味深く読んだ。そして、この本を読むことを、私は里山の自然を体験していない若い世代にすすめたい。自然保護を遠い世界のこととしてしまわないために。

●バーダー評(1998年3月号)=里山を多様な生き物の共生の場としてとらえ、人間との関わりの中で環境の復元と活性化を図ることを主張している。ただし、いわゆる「里山公園」化を危惧し、里山の自然を改造するのではなく維持するのだというスタンスを強調する。

●月刊むし評(1993年9月号)=最近とみに重要視されてきた自然環境としての里山がいかに変貌しつつあるか、そしてそこにすむ多様性に富んだ生物たちに危機が訪れつつあるかをやさしく解き明かす。里山の崩壊が私たちの生活にどのような影響をもたらし、このまま推移した場合にわれわれが接しなければならない“自然”についての未来像をするどく指摘する。危機感を強めた著者らは、里山=雑木林と人とのふれあいを深めることを提唱し、住民による、よりよい管理活動を模索する。

●科学新聞評(1993年11月12日)=里山は民話の舞台であり、子どもたちの遊び場であり、しかも氷河時代の生物たちの避難場所でもあったのだ。現代の農業にとって不要になったからといって、里山を開発の対象にするのはもったいない。このことを訴えるのが、本書の目的である。
昆虫生態学の石井博士のほか、植物学の植田邦彦博士、造園学の重松敏則博士が加わり、自由に執筆したことで、この本をいっそう興味深いものにしている。

●京都民報評(1993年8月15日)=二次林として扱われている里山の森にはたいへん豊かな自然があることが、最近、動・植物の専門家によって明らかにされ注目を浴びています。本書はこの人里生物の温存を訴えて、昆虫、植物、造園の専門家が分担執筆しています。
里山を守るには、「天然記念物的発想」とか「造園的手法」でなく、大切なのは、ひんぱんに手を加えて維持することが、多様性に富んだ自然を守ることだと、イギリスや国内各地の市民による里山管理活動の例を紹介しながら説いています。

●出版ニュース評(1993年7月中旬号)=里山を多様な生き物の共生する自然環境としてとらえ直し、環境の復元と活性化を訴えたもの。
里山は無秩序に放置されるかゴルフ場開発とゴミ投棄などでズタズタにされているのが現状だ。そうした生態破壊の現状分析や里山の保全・維持の具体的ノウハウに加え、「無価値なものの価値」の大切さを忘れてはならないと説く。

●登山時報評(1997年7月号)=この本は何の気なしに買ってしまいましたが、読んでいくうちにギフチョウやカタクリの生態、私たちの周りにある雑木林の役割がとても分かりやすく書かれていて、途中からは夢中で読んでいました。

●地団研そくほう評(1993年10月1日号)=里山とは簡単には雑木林のことで、台地や丘陵等にみられる落葉広葉樹林をさしている。都市の背景に押しやられ、長らく存在価値に気づかれずにきたが、生物学的に重要な意味がある。里山の自然は縄文の頃よりこれまで人間の生活を支えてきた歴史的な場であり、適度に人手を加える(遷移の進行を止める)ことで維持されてきた半自然で、多様な生物が依存してきた空間である。宅地化やゴルフ場開発の魔の手から守られればよしとこれまで単純にとらえていたが、里山の重要さには驚かされた。
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