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きのこの生物学シリーズ8
きのこと動物

【書評再録】


●朝日新聞評(1989年9月17日)=「菌はあくまで菌」だとする著者からすれば、菌と動物の関係が対等の立場で取り扱われて当然であろう。今まで当然でないとされていたその領域にするどくくさびを打ち込んだ本書は、「世界に例のない本」という自負に応えたユニークな内容になっており、マツタケなどの食用きのこしかしらない者には、地下の王国を作っている異界のものどもの不思議に目を見張らされる。
放尿跡を追って生える遊牧民のようなイバリシメジや死体専門のトムライカビの話は、気ままな空想を起こさせてくれて楽しいが、狸の糞場やモグラの巣に生えるきのこへの執念は、動物生態学と密着した新側面を見せてくれるとともに、研究の進め方や学際研究のあり方について、若い人に大きな刺激を与えるだろう。この本を面白くしている要素の一つは、背後に見え隠れする著者の人柄である。警句がちりばめられ、きのこのようにとびだすユーモアに思わず噴き出してしまう。

●産経新聞評(1989年7月10日)=動物ときのこの関係を「食う・食われる」の観点から考察するが、とりわけ詳述されているのは動物の排泄物や死体の分解と菌類の関係についてで、「糞生菌」「アンモニア菌」などの生態を写真も交えながらクローズアップしてみせる。
著者が新しく切り開いたという世界も多く、自然の中の共生関係に驚かされる。
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