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わたしの愛したインド 【書評再録】 | |||
サルマン・ラシュディ氏=進歩をよそおったインドの二大背信行為について、すばらしいルポルタージュと情熱的で激しい批評を両立させている。
●ことし読む本 いち押しガイド2001「津島佑子氏が選んだ単行本ベスト1」(2001年版)=突然、ブッカー賞を受賞してしまったこと、せっかく世界の大スターになったのに、こともなげにもう小説を書く気はないと公言したこと、そして小説の舞台になった小さな町から名誉棄損で訴えられたこと、そんなはらはらさせられる若い女性が次はどうするんだろう、と世界中が興味津々だったわけです。そうしたらなんと、インド政府の大規模水力発電ダムの建設と、核実験に対する抗議に身を投じたということで、さすがにやるなあと痛快な気持ちがしました。この本はその二つのテーマで書かれたエッセイで、彼女独特のきびきびした文体がとてもよく翻訳されていました。 ●熊本日日新聞「中山千夏が読む」欄(2000年11月19日)=愚行に酔う祖国からの「独立宣言」。現代インドに息づく抵抗精神示す。 「想像力の終わり」と題されたそれは二つの主流誌に同時発表され、インドの反核運動に大きな力を与えた。全編に漲る緊迫感は、地球市民としての彼女の核爆弾への恐怖や、祖国を愚行から救いたい焦りによるだけではない。 「想像力の終わり」と共に同書に収録されている「公益の名のもとに」は、核実験批判に続いて、これまた国家が誇る大型ダム開発事業を厳しく批判し、物議をかもしているものだ。そこに暴露されるインド国家と世界銀行および諸大国の悪辣非道には、まったく呆れかえった。 主題はどちらも重く複雑だが、怜悧なユーモアが息抜きをさせてくれる。現代インドの抵抗精神を知るのに、最良の一書だ。 ●週刊金曜日評・野田直人氏・国際協力事業団派遣専門家(2001年5月11日号)=国家とは? 民主主義とは? 人類が直面する普遍的な危険を告発。 本書の著者アルンダティ・ロイはインドの作家である。1997年に英連邦では最高と言われる文学賞、ブッカー賞を受賞している。この本はインドで行われつつあるナルマダ川流域のダム開発と核兵器の開発という、大きな二つの暴力を批判的に描いた二編のエッセイを集めた書である。 このような著名な作家が、しかも女性である著者が、国家権力の行うことに対して真っ向から批判を行うことは、社会的に大きなリスクを伴うことであろう。そして、それゆえにまた運動を続ける人たちにとっては、大きな力となるであろう。 ●山と渓谷評(2000年11月号)=本書には「想像力の終わり」と「公益の名のもとに」というふたつの長編エッセイが収められている。前者では、インド政府が1998年5月に行った核実験を、後者では、インド中央部を東西に流れるナルマダ川流域で進行している巨大開発計画を、それぞれ鋭く批判している。 著者は1997年にイギリス最高の文学賞であるブッカー賞をインド人として初めて受賞し、国家の名声を世界に広めた女性として、一躍国民的ヒロインとなった。しかし、皮肉なことに、政府にとって国威を発揚するべき核実験と近代化のための河川開発の両国家プロジェクトは、国家の名声を高めたその作家の著した本書によって、その裏に潜む暗部に光が当てられてしまった。現代インドの一側面を垣間見ることのできる快著。 ●読書人評(2000年9月22日号)=インドの核兵器開発はマスコミでも大きく報道されたが、同国で3600基の巨大ダムがすでに建設され、さらに1000基が建設中であるという事実は、内外のこの種の書物などにはかなり目を通してきたつもりの私も唖然とさせられた本である。 この本は単なるルポではない。インドの国民的英雄であり世界的なジャーナリストのアルンダティ・ロイの鋭い批判が全体に込められており、「砂漠のキャデラック」などの訳者でもある片岡夏実氏の訳で、世界への警鐘でもある。日本は政治三流国と言われているが、日本人こそ必読の書である。 ●出版ニュース評(2000年9月上旬号)=1997年、インド国籍をもつインド人として、またインド女性としては初めて英連邦最高の文学賞であるブッカー賞を受賞し、一躍国民的英雄になった著者が、インドの抱える深刻な問題となっているダム建設と核兵器開発を激しく非難するために書いた2つのエッセイをまとめたもの。 | |||
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