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妻の言い分・夫の言い分

【内容紹介】本書「はじめに」より


 「ほかの夫婦と自分たちをくらべないこと」
 テレビのバラエティ番組で、「これから結婚する人にたいして、これだけは覚えてほしいというアドバイスがありますか?」と問われた俳優の神田正輝氏が、こんなふうに答えていました。
 確かに、夫婦は百人百様です。育ち方や性格、世の中の関わり方も違う男女が出会い、暮らしを営むのですから、そこにはさまざまな葛藤があって当然でしょう。いっしょに暮らしてはいてもなかなかわかりあえない、または、わかりすぎてしまったために何も言えなくなる……。でも、そんな戸惑いの中から、少しずつふたりのスタイルができあがっていく、それがまた、夫婦のおもしろさなのかもしれません。
 敗戦後十年を経た1955年に、小社は、有名、無名の48組のご夫婦の「言い分」を収めた「妻のいい分・夫のいい分」と題する本を刊行しました。その本を評して、評論家の中島健蔵氏は、「ある先輩が、私に向かって、十年も二十年も夫婦生活を無事に過ごすのは芸術の創作と同じような努力のいる仕事である、と言ったことがある。妻のいい分、夫のいい分も、こう数がそろうと、芸術家の芸談のごときものであるかもしれない」と書かれました。
 それから四十年。小社では今回、同じ構成、同じタイトルで本を編んでみました。もちろん、「夫婦」や、夫婦が核となる「家族」のあり方が揺れているという社会背景はあります。でもむしろ、肩肘張らずに、妻から夫へ、夫から妻へ、ふだんは書かないような少し長めの手紙を書く……。そうすることで、ふだん伝えられなかった言葉、相手にいってほしかった言葉などに出会うことがあるかもしれません。
 百人百様のカップルがさまざまな思いを抱えながら「寄り添って生きる」「寄り添って老いる」。くらべることのできないそれぞれの人生の輝きと醍醐味を、本書からくみ取っていただければ幸いです。
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