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日本の近・現代史と歴史教育 【内容紹介】本書「まえがき」より | |||
本書は、1993年11月12・13日の2日間にわたって横浜市おいて開催された、フォーラム「歴史と歴史教育」の記録を兼ねて、当日の各講師による講述内容を編集したものである。 フォーラム「歴史と歴史教育」は、同フォーラム実行委員長・神奈川新聞相談役の桶本正夫氏の呼びかけにより、「明治」開国とともに諸外国への門戸とし定義づけられてきた横浜という知域の史的特徴に立脚して、近現代日本とアジア諸地域との関係史の考察を深めるとともに、その関係史認識を史的に歪めてきた重要な要因として教育内容を再検討する契機を得たいとの志向をもって組織された、最初の意見交流の「広場」であった。 桶本氏の提唱に応えて、1992年11月以降、三谷太一郎(東京大学教授)、内山秀夫(慶應義塾大学教授)、坂野潤治(東京大学教授)、小尾俊人(評論家)の各氏と私からなる準備の会合がしばしば持たれて、フォーラム企画の目的・内容を詳しく検討するとともに講師の人選などにあたった。社会科学諸分野の研究者からなるこの準備会合における毎回の討議が、すぐれて知的刺激に充ちた機会であったことは、今なお私の記憶に鮮明に焼きついている。 私たちは、今回のフォーラムの編成を次のような五部に分けることとした。 1.日本とアジア 日本とアジアとの関係を史的に広い視野から考察することを目指した。幕末維新期の日本からアジアへの眼差し、近代中国からの日本近代への研究関心の内包、そして韓国から見つめた歴史教育における日韓関係把握の問題点の、三つのテーマに焦点づけて、松本三之助、區建英、李鍾元の各氏に講師を委嘱した。 2.近代日本と軍 日本--アジア関係の視座において、無視しえないのは近代日本における軍の形成とその役割である。米国の日本研究者であるシオドル・F・クックおよび北岡伸一の両氏に講師を委嘱した。 3.近代日本のジャーナリズム 近代社会において、民衆・知識人の如何を問わず、人びとの時代認識意識や歴史意識の形成にとって重要な機能をはたしたのはジャーナリズムであったと考えられる。本フォーラムでは、この種の講演企画では従来取り上げられることの少なかったと考えられる、近代日本でのジャーナリズムの問題を取り上げることとし、次の3氏に講師を委嘱した。飯田泰三、有山輝雄、山本武利。 4.近代日本の財政と政治 近代日本の国家体制を実質において支えた財政政策の変遷を、明治・大正・昭和初期にかけて検討することとした。講師には坂野潤治、原朗、三谷太一郎の3氏を委嘱した。 5.歴史教育と文部行政 国家意志としてどのようなアジア認識を国民の間に形成しようとしたのか、教科書編集を中心とした教育行政機関による教育内容政策の特徴を分析することとした。講師には、佐藤秀夫、磯田一雄の2氏を委嘱した。 それぞれに専門領域において先導的役割を果たされている、それだけに多忙を極めておられる研究者の方々が一堂に会して、研究成果に基づく自由な討議を展開されたことは、一種の「壮観」であり、もとより稀有の有益な機会であった。 | |||
【内容紹介】本書「あとがき」より | |||
2年前横浜で開催されたフォーラム「歴史と歴史教育」に参加した13名の講師が講述内容をまとめたのが本書である。本書への収録に際し、速記録を元にそれぞれが加筆訂正を行った。その後の2年間の研究成果が随所に投入されている。 全体を読み返してみて、フォーラム当日に受けた印象や感想が正しかったことがわかる。高レベルの内容が平易に語られていたし、講師とコメンテーターの討論も新鮮な知的刺激を与えるものであった。各部の5人のコメンテーターの先生は適切な意見や知識を出されて、会場を盛り上げてくださった。フロアからの質問も多様で、鋭かったと思う。 したがって本書は会場に来なかった人のために伝えたり、文献として残すだけの意義ある内容と、編者の一人としての私は確信をもった。 | |||
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