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スクーバ・ダイビング入門 海に潜った

【内容紹介】本書「はじめに」より


 とうとう海に潜った! 1992年の夏でした……。
 私は文章書きなので、何か感動したり驚いたりすると、思わず文章で表したくなります。潜ってみて、おおいに感動した私は、潜るってのはこんなふうにおもしろいんだよ、こんなふうにして潜るんだよ、海の中はこうなんだよ、と文章で言わずにはいられませんでした。それが、この本の最初の部分「私のログブック」になりました。これは、スクーバ・ダイビングを始めて間もなくから、つい最近まで書き続けた、私のスクーバ・ダイビング入門記です。だから、この本のタイトルについている「入門」も、入門を教える書、ではなくて、私の入門体験を記した書、という意味なのです。
 それにも書きましたけれど、いよいよスクーバ・ダイビングを始めようと決心した時、私は何も知りませんでした。近くに教えてくれる人もいなかったので、何か本を、と探しましたが、訓練や免許のこと、それに「そもそもスクーバ・ダイビングとはなんぞや?」という基本的なこと、それらをわかりやすく説明している本は見当たりませんでした。また、講習を始めてから手に取った教科書も、すっきりとスクーバの全貌が見えるように書かれてはいませんでした。
 この本の二番目の部分「てとりあしとり事典」は、その経験から生まれたものです。ぜんぜん知らない人にもよくわかる説明書があれば、私はもっと早く、もっと気楽に、スクーバを始められたろうに、そんな読み物があれば、もっとたくさんの人が講習の門をたたいて、すばらしい体験をできるだろうに、そう思って、何も知らない人と初心者のためのミニ辞典を作ってみたわけです。
 「私のログブック」とあわせて読んでいただければ、スクーバ・ダイビングのことは、おおよそ全部わかるだろうと思います。
 それにしても海に潜ることの魅力はすごい。言っても言っても言い足りない。それで、私が教えを受けたインストラクターたち、よく一緒に潜る仲間たち、そして日本のスクーバ開祖のおひとり益田一さん、みなさんにも潜ることについて語ってもらいました。「プロに聞いた」「バディにきいた」「海中30年」の各パートがそれです。この部分は、ベテランのダイバーやプロ、そしてプロを目指す人々には、とってもおもしろいはず。もちろん、初心者にも楽しめる話がいっぱいです。
【内容紹介】本書「私のログブック」より

 ものすごくおもしろい、と親友が言ったのだ。いっしょにやろうよ、と熱心に勧誘したのだ。
 モグリ。潜水。「スクーバ」と彼女は言った。彼女は、ほんの2、3センチだが私より小柄でほんのみっつだが私より年上である。つまり、体格とか年齢とかいうことでは、決して私よりイキがいいというわけではない。おまけに、私は平泳ぎでなら何とか100メートルばかり泳げるが、彼女はまるでカナヅチなのである。それでまず、私の心は「おっ?」とモグリに向かった。彼女にできたのなら私も、今からでもできるかもしれない……。
 水際で手取り足取り、幼児なみに準備、点検をしてもらい、指示どおり、センセイのチョッキの肩ヒモを握って、深みに導かれていった。水面がだんだん高くなる。胸まで来て、気のせいだろうが息苦しい。水中で装備が故障したらどうしよう、とふと思う。しかし、「では、顔をつけて行きましょう、はい!」と言われて、泳げないうちから飛び込みだけはできた根性がむっくり頭をもたげ、ざんぶと倒れて足を浮かせた。そのとたん、世界が一変したのだ!人で煮えたつ湾の下に、こんな世界があるなんて、誰が想像するだろう!今まで隠されていた世界の上空を、私は飛翔していた。新世界の景色に見とれ、センセイが水中図鑑で示してくれる魚たちに見とれ、快適な飛翔感覚を楽しみ、忙しくて忙しくて、呼吸停止の可能性など、すっかり忘れてしまっていた。
 そして、無事、生還して頭が水から出た時、思わず私は叫んでいたのであった。
 「ざいごー! おぼじろがっだぁ!」
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