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きのこの生物学シリーズ6 きのこと木材 【内容紹介】本書「はじめに」より | |||
木材ときのこのかかわりあいというと、人は何を思い浮かべるであろうか。まずはシイタケ、ナメコ、ヒラタケ、エノキタケ、マイタケといった食用きのこか、漢方薬店で万病に効くといって売られているブクリョウやマンネンタケであろう。生態学を少し学んだ人なら、自然界の物質循環にはきのこを含めた微生物や小動物がおおいに貢献しており、こうした分解者がいなければ地球はたちまち落葉、落枝、倒木で厚くおおわれてしまうと教えられたことを記憶しているであろう。 これらはきのこを含めた微生物と木材のかかわりを好ましいものとする見方であるが、木材という材料をわれわれが種々の用途で利用していくさいには、腐朽害というはなはだ不都合な問題がいつもつきまとう。もう一昔になるが、北海道で新築まもない住宅にナミダタケによる腐朽害が多発し、マスコミに取り上げられて社会問題になったことを記憶している方もあろう。木材の腐朽は住宅・社寺・倉庫・山小屋などの建築物だけでなく、電柱、鉄道枕木、橋梁、坑木、木柵、樹木支柱、公園遊具など木材利用のほとんどに及んでいる。 またこのような利用以前に、樹木として林地で生育しているとき、切り倒され丸太で貯蔵されているとき、製材され自然乾燥されているとき、パルプ原料用に小さなチップにされ工場に野積みにされているときにも腐朽は発生している。このような腐朽による損害額は年々莫大なものであり、どの国でもその防止手段を研究する機関や学会、防腐薬剤の製造や防腐処理加工を行う企業が活発な活動を行っている。また毎年国際学会が開催され、共同研究もさかんに行なわれている。 本書では、栄養源の摂取法を異にするいわゆる腐生菌、寄生菌、共生菌の中での木材腐朽菌の位置づけ、木材腐朽力の獲得と発展経路、木材の腐朽型の類別とその特徴、発生環境を異にする各種木材腐朽菌の生理・生態など、菌類としての木材腐朽菌についてきのこを主体に解説する。そのさい木材についての理解を容易にするため、木材の構造や諸性質をまず説明する。ついで木材の腐朽という現象を、木材中での腐朽菌の挙動や他の微生物とのかかわり、木材に生ずるさまざまな変化をまじえて解説する。 木材腐朽菌の有効利用については本シリーズの「きのこの利用」で述べられているので、本書では木材の腐朽害を防止するための手段を、建築物を主体に説明する。 | |||
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