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なぜ婦人科にかかりにくいの? 利用者からの解決アドバイス集 【内容紹介】●本書「はじめに」より | |||
婦人科医の書いた婦人科についての本は数多く出版されていますが、肝心の知りたいことが書いてなかったり、「(患者からすると)これは違うでしょう……」と思うことがかなりあります。
例えば、こんな文章を読んだときです。 「あなたにとって、性器はアカの他人になど見られたくない特別な場所かもしれません。でも、婦人科の医師にとって、性器は診察するカラダの一部でしかありません。眼科の医師が目を見るように、性器を見る。それだけのことです」 「……こうした姿勢で診察を受けることは羞恥心が働いて、誰もができれば避けたいと思いがちです。しかし、内診は歯医者さんで口をあけるのと同じことなのです。決して恥ずかしいものではありません」 「ドクターは毎日おおぜいの患者さんに接しているし、何よりも病気を主体として見ていますから、内診も単に診断手段として行っているものです。ですからあまり恥ずかしがらず、割り切って受診されたほうがいいと思います」 女性たちの婦人科受診への抵抗感をやわらげようとする、書き手の医師たちの優しさや思いやりがひしひしと伝わってきます。でも、私たちが内診台で開くのは、まぶたでも、くちびるでもない。 医師が恥ずかしくなくても、私たちは恥ずかしい。医師は慣れっこでも、私たちは慣れていない。医師や看護婦が、人によっては「性器だけ」を見ていて、その持ち主に人格があることを、うっかり忘れてしまうことが問題だったりするのです。まさに、そのからだの部位や、立場の「違い」が問題なんです。そんなわけで、「これまで、あまり語られてこなかった患者からの声が、ぜひ必要だね」というのが作り手たちの共通の思いです。 私たちふたりは、相談活動などを通じて、婦人科医療にはぐれたり、適切な医師にたどりつけていないために、苦痛を長引かせたり、病気を進行させてしまった人たちに数多く出会っています。一方、不安をあおって、必要もないのに、医療に追いこむようなことはしたくありません。そのため、私たちの合言葉は、「必要なときに、婦人科にかかる機会を逃さないために」。そして、どうせかかるなら、「あなたが、安心・納得できる治療が受けられるように」。 利用者がネットワークするなかで、見えてきたことがあります。婦人科は、医師や病院によって、診断や治療法にかなりのばらつきがあること。不十分な説明しか受けられず、医師とのコミュニケーション不足に悩んでいる人が山ほどいること。外来での医師との会話が外にもれ聞こえたり、患者に無断で研修生が内診の見学をすることが当たり前になっていたりと、プライバシーが守られていないこと。カルテの開示など、情報公開が遅れていること。良性疾患、悪性疾患を問わず、必要なメンタルケアや、その人に合った治療を選ぶためのサポートが不足していること。医師によっては、診察を通じて、女性である患者さんの生き方、人生設計にまで、口を差しはさんでくること。検査や治療には限界があるのに、患者にそれが知られていないため、医療への幻想が独り歩きしがちなこと。がん検診によって引き起こされる被害のこと……。ほかの医療の分野でも事情は似たりよったりのところがありますが、婦人科は特に情報が少ないので、それが見えにくくなっています。 この本が、みんなが感じていたことや、知りたいことをオープンにしていく、ひとつの突破口になりますように。わたなべさんも私も、婦人科にかかるのに最初は手探りで、いっぱい失敗を重ねてきたので、これからかかる人や、かかりながら悩んでいる人たちが、「できるだけ失敗をくり返さないですむように」という切ない気持ちで、自分たちの恥ずかしい経験も、紹介しています。 | |||
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