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よみがえれ生命の水 地下水をめぐる住民運動25年の記録 【内容紹介】●本書「はしがき……津郷勇」より | |||
山紫水明の地、名水の町として全国的に知名度の高い福井県大野市は、往時には町のいたるところに豊富、清澄な湧水に恵まれ、文字通り名水の町に相応しい風情を醸し、清澄な湧水のみに棲み、水草に造巣する淡水小魚「イトヨ」の、わが国における数少ない貴重な生息地としても知られ、湧水と歴史的な町並みが県内外の多くの人々から親しまれている。
ところが、近年、市民生活様態の様変わり、用水型産業構造の変化、涵養水源付近での耕地基盤整備の進捗、不浸透地表の増加、公私諸施設での雪対策用水の飛躍的な使用量増加、利便追求型市民生活、無対策的な産業用水の大量使用に伴い、井戸水の慢性的な枯渇で市民生活に不便を来し、湧水の枯渇に、有機塩素溶剤による汚染の問題が加わって、大野の水問題は一般市民に地下水を守る運動としての意識の高揚を促していく。 しかしながら、大野の水問題は、その後も混沌とし、行政からも市民サイドからも科学的・技術的背景をもった、真に最適かつ具体的な解決策が出ないまま、上下水道の計画が進んできている。 市民参加のためには、市民サイドの知識を専門的レベルまで向上させることと、特に、行政サイドでの情報公開、リーダーシップの発揮、問題解決へ向けた協調的姿勢、努力が肝要となる。全国に先駆けて、進歩的な市民参加型の活動を展開していただきたいと願っている。問題に対する利害・相互の立場を個々の思いに限定せず、真の専門的・学術的立場に立脚した解決策へ向けた全市域向きベクトルを持って欲しい。 | |||
【内容紹介】●本書「あとがき……柴崎達雄」より | |||
「大野の水問題は、日本の水問題のすべてを凝縮している」
その直感は大野盆地の地形・地質からくる、自然科学的なセンスに大半はもとづいていた。しかし、この著作を読まれればお分かりのように、大野の水問題は自然科学的な視点をこえて、日本の水政策のあり方、さらには地方自治のあり方、究極的には、日本の政治の本質までに論がすすめられている。つまり、現在、私たちが抱えこんでいる政治経済的な問題までもが、大野という一地方都市の水問題に凝縮しているのである。 とくに、過去長年にわたって実施されてきた「公共事業」のツケが、高い水道料金として住民に降り注いでくる昨今の行政システムの矛盾、またそれをおしすすめてきた古い政治・行政・業界の癒着の実情を、これまで具体的にあばきだした記録は、あまり前例がないと思われる。とくに、主婦という感覚から出発した運動が、日本の古い政治体質の深層部をえぐりだしたことに、一種の感銘さえ覚えるほどである。 もちろん、この事態をするどくえぐりだしたのは、野田さんを始めとする「水を考える会」の人たちの、四半世紀におよぶ絶え間ない活動によるものであることは、多言を要しないであろう。いろいろな難題が起こったとき、まず現地調査によって、事実を確かめながら相手を論破していくやり方は、環境問題を解明する基本的な手法である。また疑問に思ったことは、自ら実験台になってデータを求め、そのためには多大の苦労も辞さないという、野田さんたちの積極的な行動は、私たちにとっても、大きな反省と再挑戦する気概を与えてくれたことに感謝したい。また、現在大学などの研究室に閉じこもり、環境科学を専門にしていると自称している研究者の人たちには、ぜひ学んで欲しいものである。 | |||
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