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犬を飼う知恵 【内容紹介】●本書「まえがき」より | |||
犬の飼い方の本というと、今まではほとんどすべて、犬の種類の沿革や標準を詳しく説明することが標準となっていた。ところが、この本では、そういうことを一切省いてしまって、それに代わるものとして、挿絵と一覧表で、各犬種の原産地、体形、用途などを見やすく巻頭にまとめてしまった。展覧会に出すことだけを目的としないなら、世の多くの犬好きの人のためには、犬種の詳しい説明よりも、もっと大切なことがほかにあると思われるからである。これだけでも、この本は常識的にはずいぶん変わったものと言えるだろう。
また、犬の食物や食量を栄養学的に分析し、ていねいに朝夕の献立までかかげてある本があるが、この本ではそういうことも避けて、もっぱら、たいがいの家庭で、手近にすぐ実行できることを取り上げるようにした。 そういう意味では、これは確かに初歩の方のものである。しかし、結果としてごく平易に見えることにも、それ相応の由来するところがあるはずである。私はむしろ、それを重視して、一応、その土台となる事柄を説明しておくことにした。しかつめらしい言葉でいえば、動物の生態学的の、また心理学的の裏付けがほどこされているのである。そして、犬の生理や習性を、野生の狼と比較したり、時には、われわれ自身と比較したりしたのもそのためである。 次に、ここには犬の病気のことが、かなり詳しく述べてある。多くの人が、あまりに病気のことを知らなすぎるし、また、犬に限らず、健康こそ幸せの第一の条件だからである。獣医師諸家の手で、愛犬家のために、犬の病気のことを記した本もかなりあるが、たいへんな数の病気の名前が並べられていて、それも専門用語でうめられている。だが、じっさいには、重大な犬の病気は数種にすぎないのだから、それをよく理解していただくことが大切なのだと思う。 それから、従来、不問に付されてきたことも随所にとりあげた。当然のことのように慣用されてきたしつけの仕方を批判したり、犬の気持ちを少しも考慮しない繁殖者の行為に反省を求めたりしたことなどである。また、重要なことでありながら、今までほとんど触れられていなかった獣医師にかかる場合の心構えを特に詳しく述べたところもある。 そのほか、家庭での処置も、できるだけ平易にやれる方法を選んだ。駆虫や洗浄に対する誤った先入観を解くことや、むずかしく言われている薬の与え方をやさしくすることなどはその例である。 | |||
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