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環境評価ワークショップ 評価手法の現状 【内容紹介】●本書「はしがき」より | |||
近年、環境を社会経済的に評価する手法の研究がいちじるしく進展している。顕示選好法として分類されるトラベルコスト法やヘドニック価格法、あるいは表明選好法として分類される仮想評価法(CVM)やコンジョイント分析など、さまざまな分野で多くの研究が世界的に蓄積しつつある。一方で、たとえば環境アセスメント、LCA、環境指標、環境勘定、環境会計の分野における環境の評価は、自然科学的、物量的評価にとどまる場合がほとんどであった。
しかし、現在、自然科学的評価と社会経済的評価の接合が重要な課題になってきている。このような状況のなかで私たちは、環境の社会経済評価分野の日本における研究の状況と到達点を確かめ、あらたな発展に寄与することを目的に「環境評価神戸ワークショップ」を1998年6月20日に神戸大学にて開催した。このワークショップには、研究者、行政担当者、企業、一般市民など幅広い層から総計160名の参加があり、活発な議論が展開された。このワークショップは次のような点で大きな意義を持ち、また画期的なものであった。 まず、本ワークショップが近年、公共事業の見直しをはじめとして、これまで実施されてきた政策の再評価に対して社会的な関心が高まっていることを背景にして行われたという点である。環境政策や公共政策を実施する上でその効果を示すことが問われているが、自然環境や社会資本の持っている価値は通常の市場では評価されにくく、政策の社会的効果を示すことは容易ではない。そこで、少なからぬ価値を持つ自然環境について貨幣単位による評価をおこない、社会的意思決定に反映させていくことは焦眉の課題だと言える。すなわち、環境を社会経済的に評価することは、もはや研究段階にとどまるのではなく、政策を実施する上での重要な課題となったのである。 第二に、これまで環境評価研究は経済学・工学・農学などの分野でばらばらにおこなわれていたが、このワークショップでは各分野で活躍している研究者が集い、意見交換や議論の総合化に向けた交流が持たれた。それぞれの分野で抱える課題の多くが共通したものであることが認識されると同時に、環境評価手法が多様な形で社会的に貢献することがあらためて確認された。 本書はこのワークショップの成果をまとめたものであり、本書の執筆者はいずれも環境の社会経済評価の第一線の研究者であり、しかも経済学・工学・農学などの個別の領域を越えて学際的な観点から環境の社会経済評価のあり方を問うという点で、類書には見られない新規性を持っているといえよう。 私たちは本書をきっかけとして、環境評価に関心のある研究者、行政担当者、企業、一般市民などが互いに連携し、環境の社会経済評価を社会に定着させていくことで、これまでの産業中心型の社会の見直しと新たな環境保全型社会への発展に貢献できることを期待している。 | |||
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