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ディノサウルス 恐竜の進化と生態 【内容紹介】本書「はじめに」より | |||
恐竜は、今から6400万年も前に死に絶えた。だれも生きていたときの姿を見たものはいないのに、もっとも人気のある動物である。 この本の目的は、多くの恐竜について、最新の研究成果から光をあて、新しい観点からとらえなおしてみるということである。たいていの人は、代表的な恐竜のことは知ってはいる。しかし、これまでに、何百という恐竜の化石が見つかっているが、それらはすべて骨格全体が発見されているわけではなく、科学者たちは、恐竜については、まだ、何も知っていないといってよい。 ここでお目にかける復元図の多くは、長年にわたるくわしい研究にもとづいて、恐竜が生きていたときの環境をできるだけ正確に表現できるよう努めたものである。また、最新の発見・研究にもとづく理論によって、恐竜の新しい復元のこともここに示すことにした。 恐竜の生きてきた、長い長い時間を理解するには、この地球上に人類が生きてきた時間と比べてみるのがよい。恐竜の骨が絶滅した巨大な爬虫類のものだとわかってから150年たつ。人間の一世代を25年とすると、それは6世代にあたる。キリスト降誕以後の時間は80世代となり、ホモ・サピエンス、つまり私たち現代人は、約22万年の歴史をもつというから、その年月は10000世代になる。さらに、人類の直接の先祖は300万年前までたどることができ、人類全体の歴史は約120000世代になるわけである。恐竜の寿命は100年ぐらいとされるので、恐竜の一世代をひかえめに25年とすると、恐竜はその起源から絶滅までの1億4000万年は、少なくとも550万世代ということになる。かものはし竜や角竜たちがいた白亜紀後半だけをとってみても、150万世代であって、つまり人類の10倍以上にもなるのである。しかし、地球は太陽系の中で45億年前に誕生したと信じられているので、この恐竜の出現から今日に至る長い長い時間もそれと比べれば、わずか20分の1にしかならない。 このような長大な時間に、恐竜が、大きさ、形態、種類からみて、大発展をとげたことは、驚くにはあたらない。しかし、なぜ、彼らがトカゲぐらいの小さいものから、100トンもある巨大なものに進化したのかということは、だれにもわからないことなのである。ふつう、動物たちは異なった環境に適応しながら、ゆっくりと変化していく。地質時代を通じて、たいていの動物は大型化する傾向にあり、ウマの先祖も、初めは子犬ぐらいの大きさだった。からだが大きければ大きいほど、その動物を襲うものは少なく、個々の大型動物は生きのびる機会にめぐまれ、したがって、子孫の数は増えることになる。また、動物は、偶然の機会に支配され、一つの種が他の種よりも、より有利な特徴を発展させる機会をもつということもある。たとえば、キリンは長い首のおかげで、高い木の上の葉をとることができ、低木の葉や下草だけを食べる他の動物たちとは競合はしないですむ。もし、動物たちの数が増えて食物が少なくなったとしても、首の長いキリンは、自分たちだけの食物を確保することができ、生きのびられ、こうしたもの同士の交配によって、子孫たちにはそうした利点を引きつぐことになるだろう。 生きのびるには、まだ他の方法がある。ネズミのように小型になったり、繁殖の回数を増やすことである。たいていの大型動物は、こんな小さなものにはかかわりあうことがないし、小型のものの世代は、年単位よりも週単位のように非常に短い時間で交代するので、遺伝形質はその個体集団の中で急速に広まるのである。 恐竜の進化は、その時代に地球の表面で起こったいろいろな大きな事件や、気候の変化というものに影響を受けた。しかし、そのような外界の変化が、恐竜の進化にどのように関係したかということは、まだ、よくわかっていない。恐竜だけが、その時代に生活し、そして進化した唯一の動物ではなく、彼らは、卵を産み、うろこを身につけている爬虫類の1グループであるにすぎないのである。しかし、恐竜は、その時代の最も重要なグループであったことはうたがいなく、ここでは、生活をともにしたいくつかの動物たちのことも取り上げ、それらとの関連で恐竜たちのことを取り上げることにする。恐竜たちは、いろいろな環境に適応していたが、海で生活するものはいなかったし、空を飛ぶものもいなかった。海には海生の爬虫類はいたし、空には同じく爬虫類の翼竜がいたが、それらは、恐竜とは別のグループなのである。人間の遠い先祖にあたる毛皮をつけた小型の哺乳動物も、恐竜と同じころに生活していた。鳥類は、空を飛ぶことのできる脊椎動物の中での最高の成功者であるが、恐竜の直接の子孫なのである。恐竜は別の世界に向けて、適応進化し、姿をかえて鳥類となり今日なお生きのびているのである。 | |||
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