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日曜の地学20 神奈川の自然をたずねて

【内容紹介】●本書「まえがき」より


 安藤広重の東海道五十三次に描かれている神奈川は、富士・箱根火山を背景にした、のどかな田園風景に満ちていました。近年の東京の爆発的発展によって、神奈川も東京と同じように開発が進み、その結果、平地も丘陵も家々でおおわれてしまいました。コンクリートの下に大地があるのを、忘れてしまいそうな神奈川になっています。
 日本列島の生い立ちを語る重要な記録が、神奈川の地層・岩石・化石や地質からよみとられています。その結果、神奈川の大地の生い立ちは、私たち人間の一生にたとえられるような、変化に富んでいることが明らかにされています。地層に残された変化の記録は、過度な開発によってかき消されたり、コンクリートにおおわれていますが、注意深く探せば今でも見ることができるのです。
 本書は、神奈川はもとより、日本列島の生い立ちの記録をよみとる旅のガイドブックです。日頃学校で郷土の地学教育にたずさわっている先生方が、ちょっと現地に行っただけではわからない裏道を本書の地図に示し、興味深い崖の案内をしてくれます。それは宝島の探検に似ています。崖に露出している地層や岩石を「読む」方法も、いたるところに述べられています。本書を片手に探検を続けているうちに、新しい宝の発見ができるに違いありません。
 美しい緑につつまれた地球を、生物の住めない世界にしてはならないと、地球環境の保護が毎日のように話題になっています。この運動の出発点は、私たちが立っている大地への、深い理解にあると思います。神奈川の生い立ちを物語る大地の表情を、どのようにしたら破壊することなく、人間が地球と共存できるか、具体的な回答を探さなければなりません。
 えらく硬い話になってしまいましたが、健康のために、たまには野山を歩きましょう。地層の露出している崖にであったら、本書に述べられているようなことを考えたり、しゃべったりすると、ひと味ちがった楽しみがでてくるというわけです。試してみてください。
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