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 その生態と歴史

【内容紹介】本書「まえがき」より


 生き物を研究するには、その生きている状態をそのまま観察するのが本当だと思う。これは全く当然のことである。
 そして、それには、何といっても、いっしょにくらすのが第一である。檻の中だけの拘禁状態でおくのでは意味をなさない。また、いっしょにくらすといっても、彼らをわれわれの生活に順応させるのではなく、むしろ、こちらから彼らの方に接近し、その仲間になることが望ましい。しかも、ほんとうに動物の好きな人なら、これは決して難事ではなく、自然に、そうなるはずである。
 ただし、単一の個体や種族では、その形態や習性の由来をじゅうぶんに理解しがたいことが多い。
 そこで、私は、犬や狼をよく知るためには、狼、ジャッカルから狐、狸をはじめ、熊、ハイエナ、ジャコウ猫、山猫の類いまで、かなりの数を身辺において親しんだ。
 この本に記したことは、どんな古文書や資料にも、みな、そのような私の体験が裏付けとなっている。
 その代わり、私のよく知らない、また人によって、学説のかなりに異なる史前の事柄には、思い切って一切触れないことにした。

 この本の成立には、じつに50年の歳月を要した。最初は「犬と狼」とするつもりであったが、じっさいに着手してみると、狼だけで、たちまち600枚を越してしまった。そこでこのような狼の生態と歴史を中心にしたものになったのである。

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