書誌情報・目次のページへ 書評再録のページへ 読者の声のページへ
日曜の地学5 群馬の自然をたずねて

【内容紹介】●本書「まえがき」より


 私たちの両親、そのまた両親というように、人類の歴史をさかのぼっていくと、ヒトの時代が終わってサルの世界に入っていきます。サルは自分たちで農作物をつくって収穫したり、冷暖房の機器を使って室温を調節したりすることはできませんでしたから、四季の変化が流れるまま、食べ物のある場所、すごしやすいところなどを追い求めながらすごしていました。
 人はこうした進化の道すじを背負って生きているからでしょうか。だれしも生まれながらにして森や山を歩いて自然の風情に浴したいという気持ちをもっています。このことは、どんなに科学技術が進歩し生活が合理化されようともつづいていく、と思います。
 一方、幼児期の子どもたちは、身の回りのできごとに関心をもち、貪欲に親たちを質問攻めにします。子どもの教育はこのときから中学生になるまでの間がもっとも重要であることがうかがえます。また成人して職業につくようになっても、休日には野山に出かけ、ストレスをなくそうとします。こんなとき自然に対していだいていた疑問に科学的に答えてくれる人がいたなら、どんなにか充実した気分になれることでしょう。本書はそのような人の代わりになることを願い執筆しました。
 電車、バス、自家用車、徒歩などで現地を訪れたとき、まる1日を使って自然を散策するとき(散策コース)、旅のついでに1時間ほど立ち寄って観察するとき(ワンポイント)など、群馬の自然の生い立ちと訪れた地域の特徴をつかんでいただけるように記述しました。
 観察点は、群馬県の平野部をかわきりに、山地を南西部から時計回りに配列しました。現地の地形または地層から、数万年前あるいは数千万年前にどのようになっていて、その後どのように変わってきたかを想像しますと、現在の姿が生き物のようにみえてきます。また、将来にむけてどのように変化していく可能性があるか、環境がどのように変わるだろうかなども考えることができます。
 出発の前に国土地理院発行の地形図を買い、その中に、行ってみたい散策コースまたはワンポイントを色づけして計画をたててみましょう。1日の行動の中に散策コースとワンポイントを組み合わせることもできます。最近、学生実習をしていて残念に思うことですが、大学一年生で、地図を読める人は、数パーセントにすぎません。地形図には、地域の情報(地形、住家の分布、交通、土地利用など)がつめこまれていますから、地質・地盤調査、化石採集、家族旅行、転勤先事情調べなど事前に知っておこうとするとき、必需品といえましょう。地形図を使うときの目安ですが、列車で旅をするときは20万分の1、乗用車でまわるときは5万分の1、徒歩の場合は2万5000分の1がよいでしょう。
 地形図は、案内人であり、記録ノートでもありますから、リーダーのあとについていくだけではなくて、今、自分は地形図のどこにいるかを確かめること、化石の産地、きれいな花が咲いている場所、弁当を食べた場所などを地形図に記入することが大事です。このようにしてこそ地形図が読めるようになり、のちのちまでも歩いた場所の風景をよみがえらせることができるのです。
 家族のハイキング、学校の授業、生涯教育のテキストなどにご利用いただければ幸いです。
トップページへ