| 大八木和久[著] 2,400円+税 A5判 オールカラー160頁 2021年4月刊行 ISBN978-4-8067-1617-4 国産アンモナイト100種以上! 化石写真は約400点!! アンモナイトの一大産地である北海道を中心に、 種類から採集地、標本の作製方法まで、 化石一筋50年の著者がその楽しさ・奥深さを語る。 |
大八木和久(おおやぎ・かずひさ)
化石採集家。
1950年生まれ。16年あまりにわたる滋賀県職員の仕事にピリオドを打ち、以後は自由人となり全国各地を旅して採集活動を続けています。
1997年から1999年まで、滋賀県の多賀町立博物館の開設準備室でお手伝いをさせていただく機会を得ました。主に化石のコーナーと近江カルストのブースで、資料の収集や標本作製、展示設計などを担当させていただきました。
その後、甲賀市のみなくち子どもの森でも、開設準備室で準備作業をさせていただきました。
以後は自由人に戻り、化石採集の日々を過ごしています。
僕も満71歳になりますが、気力と体力はまだまだ若く、まだ50歳くらいのつもりです。しかしながら、世間一般では高齢者扱いとなり、気分的にやりにくくなっています。今後は倒れるまで、自然のなかに身を置き続けて生きていきたいと思っています。
2020年5月26日、北海道苫前町の海岸(第三紀鮮新世:遠別層)で、海牛(かいぎゅう)の化石を発見しました。体長約8m 、ほぼ全体が残っていると想像される大海牛の化石です。
はじめに
白亜紀後期とアンモナイト
地質時代──白亜紀後期
アンモナイトとは
アンモナイトの各部の名前
アンモナイトの内部構造
アンモナイトの生き残り?
……トグロコウイカ
これってアンモナイト?
似てるけど
アンモナイトの外形と断面
ノジュール
ケガをしたアンモナイト
渦巻きアンモナイトと自由巻きアンモナイト
化石の名前について
北海道のアンモナイト
美しいアンモナイト
ノジュール
フィロセラス科
ゴードリセラス科
テトラゴニテス科
コスマチセラス科
デスモセラス科
パキディスカス科
プラセンチセラス科
コリグノニセラス科
アカントセラス科
顎器
不明種
ノストセラス科
ディプロモセラス科
バキュリテス科
スカフィテス科
ツリリテス科
北海道のその他の化石
頭足類(オウムガイ、鞘形類)
腹足類(巻貝)
斧足類(二枚貝)
掘足類(ツノガイ)
腕足動物
ウニ類
ウミユリ類
サンゴ類
甲殻類
昆虫類
爬虫類
軟骨魚類
硬骨魚類
植物化石
各地のアンモナイト
石炭紀のアンモナイト
三畳紀のアンモナイト
ジュラ紀のアンモナイト
白亜紀のアンモナイト
採集から標本の作製まで
化石の採集
ウルシなどの対策
虫除け対策
ヒグマの対策
クリーニング
整理と保管
僕がアンモナイトを採集したところ
アンモナイト産地の紹介
各地のアンモナイトの化石産地
道北編
【コラム】北海道巡検の全記録
稚内市 東浦
遠別町 ウッツ川(清川林道)
遠別町 ルベシ沢
中川町 学校の沢と化石沢
【コラム】国有林の入山について
羽幌町 三毛別川
【コラム】化石巡検と季節
羽幌町 羽幌川水系
【コラム】歴代の相棒たち
苫前町 古丹別川水系
小平町 小平蘂川水系
【コラム】ヒグマの話
全国の化石産地を訪ねて──日本一周自転車旅行
アンモナイトを展示している博物館や資料館
博物館活動とアマチュアの連携──多賀町立博物館の場合
終わりに
1971年6月11日に初めて北海道の三笠市でアンモナイトを採集してから、今年でちょうど50年になります。この50年の間に68回も北海道に通い、たくさんの化石を採集してきました。北海道に滞在しているときは毎日毎日山に入り、重いリュックを担いで毎日10qとか20qとか、山河を歩き回っています。普段の巡検では考えられないくらいの行動力です。
ちなみに、2020 年は12日間で25カ所を巡検し、徒歩が160q、自転車が40qと、とてもハードな活動をしました。言っておきますが僕は今年71歳になります。そんな僕ですが、頑張っています。
採集した化石の量はちょうど200s、それでも例年よりはうんと少ないものでした。収穫の多い年には300sを超える量の化石を車に積んで持ち帰りますから、車はペシャンコに沈み、ヒーヒーあえぎながら走らせたこともあります。
試しに計算してみましょう。平均1 回250sの収穫で、60回通ったとして1万5,000sです。なんと15トンものノジュールを採集したことになります。北海道が浮き上がり、僕の住んでいる滋賀県では琵琶湖が少し沈んだかもしれません。
化石の世界の"三種の神器"の一つがアンモナイトだと僕は思っていますが、なんといってもその種類の多さ、そしてその美しさは飛び抜けています。後の二つ、サメの歯と三葉虫も魅力的な化石ですが、アンモナイトの美しさにはとうていかないません。また、殻の幾何学的な模様や形態も、本能的に人を惹きつけるのかも知れません。
カナダから産出するアンモナイトで、殻が虹色に輝いているものがあります。「アンモライト」と呼ばれていて、宝石として扱われています。本当に美しく、誰もがその美しさに魅了されます。北海道から産出するアンモナイトもそれに負けないような美しいものもありますが、ただ、その規模が違うようです。
アンモナイトの美しさは、化石のでき方やその構造によるものが大きいと思います。特に北海道のアンモナイトは、ノジュールの中に入っているのが普通で、そのために保存状態がすこぶる良いのです。
アンモナイトの殻の中(気室)が方解石の結晶で満たされていたり、あるいはメノウに置き換わっていたり、赤や黄色に色づいているものも多く、本当に美しいです。さらに、出てきたアンモナイトの表情が人の顔のようにそれぞれ違い、同じ種類であってもまったく違います。
強いて難点を言うと、硬いノジュールの中に入っているので、ノジュールを割ったり、その中から取り出したりするときに壊れてしまうものが多いことです。また、もともと壊れているものがノジュールの中に入っていることも多く、なかなか完全なものを得ることは難しいのです。だからこそ完全なものを得ようと毎回山河を歩き回るのです。これは僕の果てしない探求心です。
さらに、ノジュールからは何が出てくるかわからない、そんなわくわく感がたまりません。まるで宝探しのようです。
僕は常日頃から化石を大事に扱うように心がけていて、見つけたノジュールはできるだけその場では割らず持ち帰り、家の中で、それもきちんと机の上で割るようにしています。ですから当然持ち帰る石の量は多く、そして重くなるのです。野外で石を割ってしまうと、化石自体が割れてしまい、破片が飛び散って失うことが多いからです。石はどう割れるかわかりません。たいてい思わぬ形に割れてしまいます。そして大事な化石が壊れ、価値が減少することが多々あるのです。あわてて破片を探すのですが、地面に落ちた小さな破片はなかなか見つかりません。そんな苦い思いをしたくないからです。
まあ、そんなきれい事を言う僕ですが、今でも採集現場で早くアンモナイトの顔が見たくて、ガツンとハンマーを入れてしまうこともあります。ハンマーで石を割る技術は上手な方だと思いますが、それでも「あ、やってしもうた」とあわてることがあります。わかっちゃいるけどやめられない、ですね。
皆さんも極力、見つけたノジュールはそのままの状態で持ち帰ってください。もちろん、すべてのノジュールに化石が入っているわけではないので大事に持って帰っても家で割ってみたら何も入っていなかった、そんなこともたびたびあります。ですから、せめてノジュールの表面に化石がチラッと見えていたなら、そのまま持ち帰った方が無難です。
僕はアンモナイトの研究者でも専門家でもありません。でも、ただの好事家でもありません。とにかく好奇心が強く、探求心も人一倍あります。本書では、そんなアマチュアがアンモナイトの魅力を、ほんの少しですがお伝えしたいと思います。皆さんは、アンモナイトを化石として見ると同時に、生き物としても見てください。きっと興味が倍増するでしょう。
古生代デボン紀から中生代白亜紀にかけて地球に生息していた軟体動物・アンモナイト。
棘があったり虹色に輝いていたり、縦横自由に巻いていたりと実はさまざまな種類が存在するのをご存じですか。
本書は、北海道から沖縄まで全国各地で採集できる化石・アンモナイトの中でも特に北海道で採集された化石を中心に、
分類・時代・産地・サイズを明記してオールカラーで紹介した類書のない化石標本図鑑です。
なかでも、化石を大胆に切断した断面写真は珍しく、種によって異なる内部構造を観察することができます。
普通の図鑑には載っていない、著者の経験に基づくリアルな産地情報、化石採集の注意事項やクリーニング、保管・管理方法も掲載。
一冊読めば、大きな博物館を訪ねたかのような充足感を味わえることをお約束します。