宇野木早苗[著]
3500円+税 A5判上製 364頁 2010年発行 ISBN978-4-8067-1403-3
大気から山地に降った雨が森・川を経由して大海に消えていく、太陽系唯一と考えられる水系全体の姿――物理過程を中心に、その概要を描いた日本で初めての一冊。 水系と社会との関わりにもスポットをあて、今後の河川改変のあり方への指針を示す。
まえがき 第1章 水の惑星 1.1 地球上の水の役割 1.2 地球上の水の循環 第2章 降水 2.1 日本の降水 2.2 世界の降水 第3章 森林山地からの流出 3.1 降水量と流出量の関係 3.2 森林による水の遮断 3.3 流出過程の古典モデル 3.4 観測結果が示す流出過程 3.5 緑のダム 3.6 水田の貯水機能 第4章 水路の流れと波 4.1 流れを支配する基本の式 4.2 流れの鉛直分布 4.3 流れの横断面分布 4.4 水面を吹く風に伴う流れ 4.5 水面を伝わる波 4.6 切り立った段波の進行 4.7 堰がある水路の水位と流れ 4.8 エネルギーの関係 第5章 平地を流れる川 5.1 流速と流量 5.2 横断面内の流れ 5.3 流路の形態 5.4 自由蛇行の発生 5.5 川が形成する平原 5.6 人の手で変貌する川 第6章 洪水 6.1 洪水の機能 6.2 洪水のハイドログラフ 6.3 洪水波の伝播 6.4 洪水波の基礎的特性 6.5 氾濫 6.6 増大する洪水量とその緩和 6.7 都市化した流域における出水 6.8 ダムの大量放水と決壊に伴う洪水 6.9 流出量の推定 6.10 基本高水流量 第7章 川の流れの作用 7.1 流水中における土砂礫の挙動 7.2 川の流れの侵食作用 7.3 川の流れの運搬作用 7.4 川の流れの堆積作用 7.5 山地における土砂生産とダムの堆砂 7.6 川から海への土砂流出量 第8章 川の変遷 8.1 川の一生 8.2 川の輪廻 8.3 川の成長に変化を与える外的要因 第9章 日本の川と世界の川 9.1 川の規模 9.2 流域の形状 9.3 出水の形態 9.4 比流量と河況係数 9.5 侵食速度 付 河川管理に伴う川の分類 第10章 河川感潮域の海洋波動と流動 10.1 感潮域における潮汐波の遡上 10.2 感潮域の水理計算における川と海の接続 10.3 感潮域の潮流 10.4 感潮域の洪水 10.5 感潮域の高潮 10.6 感潮域の津波 10.7 感潮域の波浪 第11章 河川感潮域における循環・混合・堆積 11.1 感潮域の循環形態 11.2 強混合型の感潮河川 11.3 緩混合型の感潮河川 11.4 弱混合型の感潮河川 11.5 変動する混合形態 11.6 感潮域における堆積環境の特性 11.7 マングローブ林の感潮域 第12章 海へ流出した河川水の挙動 12.1 河川水の基本的な流出形態 12.2 流出河川水に対する地球自転の影響 12.3 河川水流出の実態 12.4 大規模流出の場合の理論と実験 12.5 河口フロント 12.6 エスチュアリー循環の重要性 第13 章 川から海へ運ばれた土砂の挙動 13.1 変動する河口地形 13.2 河口における地形変化の時系列 13.3 流出砂がつくる砂浜 13.4 内湾の干潟 13.5 流出砂の減少に伴う海岸侵食 第14章 内湾・沿岸の流系 14.1 海洋構造の季節変化 14.2 内湾の流系 14.3 潮汐・潮流・潮汐残差流 14.4 内部波と内部潮汐 14.5 吹送流 14.6 湧昇 14.7 海面の加熱冷却に伴う対流と熱塩循環 14.8 急潮・異常潮位・外海水進入 第15章 縁海における大河の影響 15.1 日本近海の海流 15.2 長江から流出した河川水の行方 15.3 アムール川とオホーツク海の海氷 15.4 ナイル川と地中海 第16章 大洋における海水の循環 16.1 世界の海流 16.2 海洋表層の亜熱帯循環 16.3 大洋における海洋の構造 16.4 深層水の循環 16.5 世界の海洋循環 16.6 大洪水が深層循環と気候を変えた事例 16.7 変化する水系 第17章 水系と社会 17.1 日本の水系の社会的特性 17.2 河川への対応の変遷 17.3 河川事業における新たな方向と問題点 17.4 水系一体を考慮した河川管理 付録 A.1 コリオリの力 A.2 ダルシーの法則 A.3 流体の運動を表す式 A.4 底面付近の流れの対数分布則 A.5 段波 A.6 洪水波の変形 A.7 地球自転が影響するスケール A.8 内部波 A.9 渦度とポテンシャル渦度保存則 A.10 ケルビン波と潮汐の無潮点系 A.11 陸棚波 A.12 エクマン吹送流 A.13 エクマンポンピングに誘起される南北流 A.14 土木技術者の憲章 A.15 日本海洋学会の海洋環境問題に関する声明 索引