はじめに
第1章 ヨーロッパに広がる「河川再自然化」 1
1.ヨーロッパの川で起きていること 2
何を“よみがえらせ”ようとしているのか 2
2.河口堰を再開放するオランダ 4
堤防によってできた国、オランダ 4
ハリングフリート河口堰を再開放 6
汽水域を殺したことの損失 9
ヨーロッパ最大の潮間帯をふたたび 11
ハリングフリート“実験”が意味するもの 13
オランダ式合意形成とは 14
3.自然への譲歩が始まっている 17
オランダの折り返し点? 17
オランダ発・NGOリードの再生運動 20
余った農地を自然に返す 21
第2章 氾濫原の景観を取り戻す 25
1.人から切り離されていった川 26
生きていない川 26
ライン川の「切り離し」 27
「ヨーロッパの川」の危機とは 32
2.ヨーロッパの原風景、「氾濫原」 34
アイデンティティとしての景観 34
自然な川のもつ風景・空間の見直しと再発見 36
景観を取り戻す運動として 39
景観への目覚めの歴史 40
「景観は公益」という価値観 44
第3章 NGOと生態学が“治水”を変える 47
1.“新しい治水”への舵切り 48
ダム反対運動が火を点けた 48
むしろ大きくなった洪水 50
2.川の生態への深い理解から生まれた理論“ダイナミクス” 51
氾濫原の解明―WWF氾濫原生態研究所 51
氾濫原のダイナミクスのしくみ 55
氾濫原のダイナミクス 55
氾濫原の機能とは 58
「生きている」ものがつくる景観 59
3.生態学が治水術を呑み込んでゆく 61
新しい“生態学的治水”の考え方 61
統合ライン計画 61
ヴェルサイユ条約の落とし児 62
国際的な対応 64
“生態学的な氾濫”――統合ライン計画の考え方 65
さまざまな方法の組み合わせ 67
治水コストを下げる効果 69
オーストリアのWater Care 70
第4章「川にもっと自由を」――景観を創り直すオランダ 73
1.奪われてきた川の自由 74
川がダイナミクスを失った 74
川には多面的な役割がある 76
どのような自然に回復するか 78
2.「川に道をゆずる」治水 79
1990年代洪水への反省 79
「川に道をゆずる」政策 80
3.「川の景観づくり」が河川管理 81
ライン川の景観づくり計画 81
どうやって「川に空間を」与えるか 82
4.地球温暖化と河川管理 83
2002夏のヨーロッパ大洪水 83
1993−1995洪水は前兆か 85
治水の新しいアプローチ 86
5.オランダの水政策はどう変遷してきたか 87
第5章 再生の思想と方法――オーストリア・ドナウ 93
1.川が進みたいままに 94
「川は森を、森は川を必要としている」 94
ドナウと氾濫原林を再びつなぐ 97
河川再自然化の原則 99
2.全国の川を自然に戻していく 102
3.国境を超えたドナウ流域の取り組み 106
WWF中心の「グリーン・ドナウ」 106
NGOから国連まで対等なパートナー 107
流域での湿地回復の試み 108
4.国の水管理政策が変わる 109
水資源管理のあゆみと組織 109
「水収支」が水資源管理の基礎 110
地下水の重要性を知っている 111
水資源管理を統合する 112
5.都市政策に組み込む 113
ウィーン市のニュードナウ建設 114
ドナウを都市計画に組み入れ 115
第6章 新しい制度の枠組みをつくる――水法が変わる 119
1.ドイツの水法――土地利用を変える 120
連邦自然保護法 120
河川工事は「侵害」行為 121
連邦水収支法 123
氾濫域の位置づけ 124
2.EUの水枠組み指令 126
第7章 日本の河川のために 133
1.河川政策一世紀の反省 134
河川封じ込めの100年 134
近代治水の「中間総括」は 135
多自然型川づくり」の失敗 137
ダム事業のゆきづまり 138
2.「自然再生事業」を使いこなせるか 141
「自然再生事業」元年 141
「川のダイナミクス」理論を輸入 142
自然再生推進法 144
川の自然再生事業 145
3.「住民参加」から住民決定へ 147
足りない5つの要素 147
4.どうしたら水政策を「統合」できるか 151
OECDの勧告 151
「自然な循環」を水政策の基本に 152
流域管理のキーは「森林」と「水田」 153
「吉野川流域調査」の意味 154