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フィールドガイド日本の火山5 九州の火山 【内容紹介】●本書「はじめに」より | ||||||
九州は、日本列島では本州、北海道についで大きな島であり、大陸に近いこともあって、大昔から日本の玄関口となり、先進的な地域として栄えてきました。九州は、北海道とならんで、爆発的な噴火をくりかえす、活動的な火山が多いことで知られています。『隋書倭国伝』には、日本への使者からの報告の中で、九州の阿蘇火山のことが驚きをもって特筆されています。阿蘇火山のある熊本県のことを肥後の国、雲仙火山のある長崎県や佐賀県のことを肥前の国といいますが、この肥の国という表現はもともとは「火の国」を意味していたのです。九州は昔から火山の島として知れわたっていたことがわかります。
今から約6300年ほど前の縄文時代に、九州南方の洋上に位置する屋久島北方の薩摩硫黄島近くの海域で巨大噴火がおこり、大規模な火砕流や降下火砕物が九州本島を襲いました。土器などの考古学的調査によれば、この時南九州を中心に、それまでの縄文文化が絶滅し、かわって朝鮮半島や本州西部から、新たな土器文化をもった人々が渡来してきたことがわかっています。最近でも、雲仙普賢岳火山の噴火では、火砕流が発生して山麓に大きな被害をもたらしましたが、九州本島の住人は、くりかえされるこうした火山被害のたびにそれを乗り越え、火山との共存に成功してきたのです。 火山は災害をもたらすだけではありません。九州の火山は豊かな温泉や、のびやかに広がる美しい景観など、人びとに多くの恩恵もほどこしてきました。現在、九州はわが国最大の金の産出を誇っていますが、この金鉱床もじつは火山活動がもたらしたものなのです。 本書では、九州の活動的な火山のうち、由布・鶴見、九重、阿蘇、雲仙、霧島、桜島、池田・開聞の各火山を紹介します。 由布・鶴見両火山は、わが国有数の温泉地である別府温泉の熱源となっている火山です。鶴見岳火山では867年に水蒸気噴火がおこりました。由布岳火山は歴史時代の噴火記録はありませんが、約2000年前に山頂溶岩ドームとその崩壊による火砕流の噴出があり、今後も噴火の可能性がある活動的な火山です。 九重火山は、多数の溶岩ドームからなり、そのうちの久住山は九州本島の最高峰です。山麓は広々とした高原となっており、「亡ガツル賛歌」でも歌われたように、四季折々の自然の美しさで知られています。なかでも硫黄山は、歴史時代に噴火した活動的火山で、1995年には1661年以来の小規模な噴火をおこしています。 阿蘇火山は、古くから知られたわが国を代表する活動的火山のひとつで、最近でも頻繁に噴火をくりかえしています。火口付近まで観光客が近づくことができる数少ない火山なので、小規模な爆発的噴火や火山ガスなどで、しばしば犠牲者がでています。 雲仙火山は、大きな被害をもたらした火砕流の噴出をともなった1990〜1995年の平成噴火が記憶に新しいところですが、江戸時代の1663年には古焼溶岩の流出が、また1792年には新焼溶岩が流出しています。この噴火の末期には、眉山溶岩ドームの地滑り的崩壊による大規模な岩屑なだれが有明海に突入し、大津波が生じて沿岸地域に甚大な被害をもたらしました。 霧島火山は、8世紀以来頻繁に噴火をくりかえしてきています。最近のものとしては、江戸時代の1716〜1717年に新燃岳でおきた大規模な噴火が知られており、また1959年には、やはり新燃岳で顕著な水蒸気爆発がおきています。 桜島火山は、8世紀以来、5回の大量の溶岩流の流出をともなう大規模な噴火をおこしています。最近のものでは、1914年の噴火がとりわけ大規模なもので、対岸の鹿児島市にも大きな混乱をもたらしました。1955年以降、現在にいたるまで中小規模の爆発的噴火を頻繁にくりかえしており、わが国でもっとも活動的な火山のひとつとなっています。 開聞岳は、池田カルデラの形成後に噴出した新しい成層火山で、その左右対称の美しい円錐形の姿から薩摩富士ともよばれています。最後の噴火は平安時代で、山麓に被害をもたらすとともに、現在の山頂溶岩ドームが形成されました。
本書の構成
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