| 後藤啓[著] 1,800円+税 A5判並製 192頁+カラー口絵8頁 2016年9月刊行 ISBN978-4-8067-1523-8 美しい声をもつ鳴く虫21種。 意外と知られていない、採集しやすい場所・時間・方法などの捕り方と、育て方を全公開。 子どものころから鳴く虫が大好きで、 いろんな虫を採集・飼育してきた著者が、 豊富な経験をもとに書き下ろし。 |
後藤啓(ごとう・けい)
1959年、大阪府生まれ。
長年の趣味の昆虫採集、バードウォッチングを楽しんでいる。
昆虫採集は6歳から始め、小学校低学年からキリギリス、高学年からエンマコオロギやマツムシ、
中学生からクサヒバリやカンタンを飼育しており、鳴く虫の採集・飼育には豊富な経験をもつ。
最近は年間150回ほど採集に出かけ、行くたびに採集ノートをつけている。採集はおもに自宅から日帰りできる大阪府北東部と京都府南部地域で行っている。
年間14種類(コロギスを入れると15種類)の鳴く虫を飼育し、自宅で虫の音を楽しんでいる。
好きな鳴く虫ベスト3は、マツムシ、キンヒバリ、ヤマトヒバリ。
本書は、鳴く虫の美しい音色を多くの人に楽しんでほしいと、長年の経験から得た採集・飼育の方法をまとめた。
鳴く虫好きが高じて、自分で採集した虫をインターネットを通じて販売する会社「鳴く虫研究社」を立ち上げる。
また、10歳からバードウォッチングを始め、じつは昆虫よりも野鳥の方がくわしいほどだ。
先日行った植物園では、ヒナの声をたよりに、アカマツの地上10メートルのところにあるオオタカの巣を発見。
カラスとハトの中間くらいの大きさのヒナを1羽確認した。
ほかには、アコースティックギター演奏も好きで、弟とリードギターとサイドギターにわかれて演奏を楽しんでいる。
「鳴く虫研究社」http://nakumushi.jp/netshop/
【準備編】
基本の採集方法
ビーティング採集法
ルッキング・カップ・ビーティング採集法
スウィーピング採集法
熊手採集法
追い出し採集法
シート採集法
網追いこみ採集法
カップ採集法
見下ろし採集法
樹液採集法
そのほかの採集方法
採集の道具
網
柄
ヘッドライト
携帯用飼育ケース
カップ
熊手
採集計画を立てる
年間の行動計画
採集日の計画・準備
ポイントの発見方法
ポイントの調整
服装
採集の心構え
昼間の心構え
夜間の心構え
飼育する際の注意点
飼育ケース
小型種を飼う時の注意事項
マット
隠れ家や足場
置く場所
コケ水
餌
そのほかの注意点
放虫はしないこと
【コオロギの仲間】
マツムシ
スズムシ
カンタン
クサヒバリ
キンヒバリ
カヤヒバリ
ヤマトヒバリ
カネタタキ
クマスズムシ
ヒゲシロスズ
クマコオロギ
カワラスズ
アオマツムシ
エンマコオロギ
【キリギリスの仲間】
キリギリス
クツワムシ
ウマオイ(ハヤシノウマオイ/ハタケノウマオイ)
ヤブキリ
カヤキリ
コロギス
[コラム]
マツムシのオーケストラはどこへ
キンヒバリの不思議
電車をとめてしまったキリギリス捕り
ユースホステルでの夜の出来事
羽ばたくクツワムシ
おわりに
日本には南北に長い国土と四季と美しい自然があり、この大変恵まれた環境から、日本全土にじつに
数多くの昆虫が分布しています。直翅目のコオロギの仲間や、キリギリスの仲間などの、鳴く虫も多くの種が生息しています。
私たち日本人は古来より鳴く虫の飼育を楽しんできました。特に江戸時代には大流行して、たくさんの
虫売りが売り歩いていました。その後、時代とともに人々のライフスタイルが変化したり、次々と新たな娯楽が出現したりして、
鳴く虫を愛でる文化は衰退の一途をたどり、今では一部の人の楽しみとなっています。
しかしながら、大変根強い愛好家が意外と多く、インターネットで情報がにぎわっているのは、その表れの一つと思われます。
また、マツムシ、スズムシ、カンタン、クサヒバリは、江戸時代からすでに人気が高かったようで、
鳴く虫好きの好みは今も昔もあまり変わっていないというのも、大変興味深い点です。
美しい声で健気に鳴く虫たち。季節を感じさせてくれたり、風情を感じさせてくれたり、時には癒やされたりと、魅力をあげれば
枚挙にいとまがありません。
そんな鳴く虫たちを飼うことができれば、どんなに楽しいことでしょうか。
自宅の部屋で鳴かせることができれば、どんなに素晴らしいことでしょうか。
しかし、鳴く虫の多くは、草原や藪の草の葉の裏側など、人目につきにくいところに棲んでいて、ふだんなかなか目にする機会がありません。
ましてや鳴いている姿を見つけるのは至難の業です。近づいてもわりと平気で鳴き続けるクツワムシのような、例外的なものも何種類かはいますが、
大半は「声はすれども姿は見えず」という感じです。
また、採集には比較的、根気が必要です。私は幼少のころからセミ、トンボ、バッタなどのほか、いろいろな昆虫を採集してきました。
クワガタムシやカブトムシは今でもよく採集に行きます。そんな中で、この鳴く虫の採集が一番根気がいると感じています。
でも、何もしりごみすることはありません。
本書は、鳴く虫の中でも特に人気のある21種について、初心者の方でも採集し、飼育できるように、基本的な方法を紹介しています。
鳴く虫の採集は、まずはよい採集場所(ポイント)探しから始まります。意外に思われるかもしれませんが、
じつはこのポイント探しが鳴く虫の採集できわめて重要です。私も、新しいポイントを探している時に、鳴き声によって生息が確認できても、
採集は困難と判断すれば、そこをあきらめてすぐに別の場所に移動します。そうです、鳴く虫は採集しやすい場所と、採集が難しい場所があるのです。
この点を理解していれば、初心者の方でも、鳴く虫の採集をあきらめることはありません。
また、採集方法も大変重要であることは、言うまでもありません。それぞれの虫の生態や生息場所に適した採集方法があります。
さらに、採集していて、網の中に鳴く虫が入ってからも注意が必要です。採集という一連の作業の中では、目的の虫が網に入った時、
まさにその時、そこに集中力を全部もっていく、これが大変重要です。慣れていないと、とにかく網に入れようと、そこに集中します。
そして、網に入ったら捕れたと思って安心してしまうかもしれません。しかし、網の中に入ってからも、まだまだ採集は続いているのです。
捕ったと思って油断していると、逃げられることがあります。また、逃げられまいとあせってつぶしてしまうこともあります。
やっとの思いで捕った貴重な鳴く虫が瀕死状態、ということもあり得るのです。
ですから、採集方法をある程度理解してから行うのと、ただやみくもに行うのとでは、結果に大きな差が出ると思います。
また、鳴く虫は小さくて非常に敏捷なので、最初はうまく採集できないかもしれませんが、失敗を重ね、経験を積み重ねることが大切です。
それがまた楽しいのです。
鳴く虫を採集して、部屋中にその美しい声を響かせて、飼育を楽しんでください。本書が少しでもそのお役に立てれば幸いです。
なお、発生時期や採集時期は、私の住んでいる大阪府を基準にしており、地域によって多少のちがいがあることをご承知おきください。
また、一般的には虫を1匹、2匹と数えますが、虫の愛好家の間では、1頭、2頭と数えることが多いので、本書ではそれにならい「頭」を使用しています。