| 岡本芳美[著] 4,500円+税 A5判上製 448頁 2016年8月刊行 ISBN978-4-8067-1520-7 水理学で扱う時間的に変化しない流れ、定流(常流)を中心に、実務者に要求される管水路と開水路の水理に関する実用知識をくまなく収載。 管水路については、水車、ポンプ、バルブ等の機器の水理に関する問題もまとめた。 簡潔な図や数式・計算例を用いて詳細に解説する。 |
岡本芳美(をかもと・よしはる)
1937年 仙台市に生まれる
1959年 東京都立大学工学部土木工学科卒業
建設省入省、建設技官
関東地方建設局企画室
利根川下流工事事務所波崎出張所、同事務所調査課調査係
河川局治水課
関東地方建設局企画室地方計画係長
利根川下流工事事務所渡良瀬遊水池出張所長、同事務所調査課長
建設大学校教官
1969年 文部省転任、新潟大学助教授(工学部土木工学科)
1991年 新潟大学教授
2002年 文部省退官、岡本水文・河川研究所
【学位】
工学博士("山地河川流域に於ける降雨による洪水流出現象の研究"により東京都立大学より、1980年)
【所属学会】
土木学会フェロー会員
水文水資源学会
計測制御学会
【代表著書】
単著
『河川工学解説』工学出版社、1968年
『技術水文学』日刊工業新聞社、1982年
『開水路の水理学解説』鹿島出版会、1995年
『緑のダム・人工のダム』亀田ブックサービス、1995年
『河川管理のための流出計算法』築地書館、2014年
共著
『土木学会編土木工学ハンドブック第27編 河川』技報堂、1964年
『図解土木用語辞典』土木用語辞典編集委員会、日刊工業新聞社、1969年
『水の総合辞典』水の総合辞典編集委員会、丸善、2009年
【代表論文】
"日本列島の山林地流域における降雨の流出現象に関する総合的研究"土木学会論文報告集第280号、1978年12月
"雨量観測線上における細密な雨量観測"水利科学No.318 2011年4月号
"カスリーン台風による(利根川の)大水の検証−新方法による計算結果に基づいて−T・U・V"水利科学No.330・331・332(2013年4〜8月号)
まえがき
第1編 管水路の水理
第1章 管水路の流れ
1.1 管水路の流れの基礎
1.1.1 動水勾配線
1.1.2 エネルギー勾配線
1.1.3 エネルギー方程式
1.1.4 連続式
1.1.5 Reynolds数
1.1.6 流速分布
1.1.7 エネルギーの摩擦抵抗による損失
1.1.8 エネルギーの摩擦抵抗以外による損失
1.1.9 摩擦損失係数の値
1.1.10 管の粗さeの値
1.1.11 Colebrook-White式
1.1.12 Wood式
1.1.13 摩擦によるエネルギー損失を含む問題
1.1.14 Manning式
1.1.15 総合計算
1.2 ポンプを持つ管水路
1.2.1 管水路におけるポンプの種類と設置の仕方
1.2.2 ポンプの揚程と原動機の出力
1.2.3 ポンプの吸い込み側で起こる負圧
1.3 水車を持つ管水路
1.3.1 水車の種類と管水路における配置
1.3.2 Pelton水車を持つ管水路
1.3.3 Francis水車の吸い出し管
1.3.4 水車の有効落差と出力
1.4 サイフォン
1.4.1 サイフォン作用
1.4.2 サイフォン作動の条件
1.4.3 サイフォン余水吐
1.5 自由放水している管水路とオリフィス
1.5.1 自由放水している管水路
1.5.2 オリフィス
1.5.3 潜りオリフィス
1.5.4 大型矩形オリフィス
1.5.5 大型矩形潜りオリフィス
1.5.6 大型矩形不完全潜りオリフィス
1.6 複雑な管水路
1.6.1 分岐管
1.6.2 合流管
1.6.3 バイパス管路
1.6.4 管網
1.7 管にかかる水流の力
1.7.1 管水路流の運動方程式
1.7.2 管壁にかかる流水の力
1.7.3 管の曲りによって生じる流水の力
1.7.4 管の急縮による流水の力
1.8 管水路のキャビテーション
1.8.1 キャビテーション
1.8.2 キャビテーションがもたらす現象
1.8.3 キャビテーション発生の3要件
1.8.4 空洞数
1.9 Trapped air とAir pocket
第2章 管水路における過渡的現象
2.1 管水路の不定流
2.1.1 過渡的流れ
2.1.2 過渡的流れの発生原因
2.1.3 過渡的流れを制御する方法
2.2 過渡的現象の基礎方程式
2.3 摩擦を無視した場合の圧力波の伝播
2.4 バルブの瞬時閉塞、急閉塞、緩閉塞
2.5 摩擦を考慮した場合の圧力波の伝播
2.6 圧力波の伝播速度
2.6.1 圧力波の伝播速度の基礎式
2.6.2 管の長さ方向の拘束の影響
2.6.3 圧力波の伝播速度に対する空気の影響
2.7 Column separation
2.8 サージ・タンク
2.8.1 サージ・タンクの働き
2.8.2 サージ・タンクの種類
2.8.3 サージ・タンクで起こる水位の動揺の計算のための基礎方程式
2.8.4 単純なサージ・タンクの計算
2.8.5 対数法によるサージ・タンクの計算
2.8.6 差分法によるサージ・タンクの計算
2.9 エアー・チャンバー
2.10 バルブ
第3章 管水路の流量の測定
3.1 管水路の流量の測定の基本原理と総量法
3.2 差圧流量計
3.2.1 原理
3.2.2 差圧マノメータ
3.2.3 Venturi メータ
3.2.4 ノズル・メータ
3.2.5 オリフィス・メータ
3.2.6 エルボ・メータ
3.2.7 Pitot管と流速測定用Pitot管
3.3 塩水速度法
3.4 面積流量計
3.5 容積流量計
3.6 羽根車流量計
3.7 電磁流量計
3.8 超音波流量計
3.8.1 伝播速度差法
3.8.2 流速から流量への変換
3.9 渦流量計
第4章 水車、ポンプ、バルブの水理
4.1 水車
4.1.1 水車の種類
4.1.2 水車の構造
4.1.3 水車の必要回転速度
4.1.4 水車の特定速度
4.1.5 水車の特性と特定速度との関係
4.2 ポンプ
4.2.1 ポンプの種類
4.2.2 ポンプの構造
4.2.3 ポンプの性能曲線
4.2.4 ポンプの特定速度
4.2.5 ポンプの特定速度とポンプの種類の関係
4.2.6 ポンプのキャビテーション
4.3 バルブ
4.3.1 バルブとその種類
4.3.2 流量の管理用バルブ
4.3.3 圧力調節用のバルブ
4.3.4 逆流防止用のバルブ
4.3.5 空気管理用のバルブ
4.3.6 バルブによる流量調節
4.3.7 バルブにおける相似則
第2編 開水路の水理
第1章 開水路の水面形
1.1 定流
1.2 開水路
1.3 等流
1.4 等流公式
1.5 等流計算
1.6 Reynolds数
1.7 常流・臨界流・射流
1.8 Froude数
1.9 開水路の断面が持つエネルギーとエネルギー方程式
1.10 流速分布係数
1.10.1 流速分布係数
1.10.2 計算方法
1.11 特定エネルギー曲線と交替水深
1.12 臨界流発生の基準
1.13 各種の等流を発生させる水路勾配
1.14 不等流
1.15 運動量方程式と特定力
1.16 特定力曲線と共役水深
1.17 ダム下流の跳水
1.18 制水ゲート
1.19 水路の勾配変化
1.20 池から水路への自由流入
1.21 水路の池への流入
1.22 水路の自由落下
1.23 堰とナップ
1.24 ダムの余水吐の上の流れ
1.25 曲線流における水圧分布
1.26 広頂堰の上の流れ
1.27 水路底のこぶ
1.28 水路のくびれと障害物
1.28.1 水路のくびれ
1.28.2 橋脚等の障害物
1.28.3 ゴミ除
1.29 断面の急変
1.29.1 断面の急変について
1.29.2 断面の急縮
1.29.3 断面の急拡
1.30 曲線部の流れ
1.30.1 曲線水路
1.30.2 平均的縦断水面形
1.30.3 横断水面形
1.31 射流で発生する特異な現象
1.31.1 Mach線とMach角
1.31.2 斜め跳水と斜め拡がり波
1.31.3 交叉波
1.32 漸変不等流の水面形の種類と分類
1.32.1 水面形の種類
1.32.2 水面形の分類
1.33 プリズム水路で発生する水面形とその計算方法
1.33.1 計算の手順
1.33.2 単純な長いプリズム水路
1.33.3 勾配に変化のあるプリズム水路
1.33.4 勾配の変化が複雑なプリズム水路
1.33..5 断面が区間ごとに変化するプリズム水路
1.33.6 上流端に潜りゲート、下流端に水路を横切る障害物がある水路
1.33.7 貯水池から最初は逆勾配で流れ出た先にダムがある場合
1.33.8 上下2水面を結ぶ上流部は急勾配、下流部は臨界勾配の水路
1.33.9 水位の計算開始断面と計算方向
1.34 水理模型実験と相似則
1.34.1 水理模型実験と相似性
1.34.2 相似則
第2章 等流計算
2.1 等流公式
2.2 Chézy式
2.3 Manning式の粗度係数
2.4 通水能
2.5 複雑な断面の等流計算
2.5.1 流量
2.5.2 等価粗度係数
2.6 上が閉じた開水路の等流計算
2.7 経済断面形
第3章 堰・ダム越流頂・ゲート等の計算
3.1 刃形堰
3.1.1 刃形堰の種類
3.1.2 ナップの形状
3.1.3 刃形堰の流量
3.2 越流式ダム
3.2.1 ダム越流頂の形
3.2.2 越流式余水吐の流量
3.2.3 越流頂付近で発生する負圧
3.2.4 越流部下流端における流速
3.3 広頂堰
3.3.1 形と種類
3.3.2 広頂堰の流量
3.4 水門(ゲート)
3.4.1 ゲートの分類と流量式
3.4.2 ゲートの流量係数
3.5 橋脚による塞き上げ
3.6 開水路中に固定された物体にかかる力
3.6.1 揚力と抗力
3.6.2 抗力の種類
3.6.3 境界層の発達
3.6.4 境界層の剥離の発生
3.6.5 抗力係数
第4章 不等流計算
4.1 計算方法の種類
4.2 逐次法の基礎式
4.3 直接逐次法
4.4 標準逐次法
4.4.1 計算法の特徴
4.4.2 基礎式
4.4.3 計算準備作業
4.4.4 本計算
4.4.5 計算開始水位について
4.4.6 エネルギー係数について
第5章 跳水の計算
5.1 跳水
5.2 共役関係
5.3 跳水によるエネルギー損失量
5.4 跳水の形
5.5 跳水の長さと水面形
5.6 跳水の位置
巻末
引用
1 第1編
2 第2編
参考図書
付録
1 次元
2 SI 単位と単位換算
3 水の性質
4 付表
4-1 代表的物理量の諸元
4-2 SI 単位
4-3 長さ、面積、体積、流量に関する単位の換算表
4-4 水の性質に関する諸数値
4-5 気温・気圧の高度分布
4-6 ギリシャ文字
索引
1 第1編
2 第2編
3 付録
著者が『実用水理学ハンドブック』の執筆の際に目標としたのは、水理学に係わる仕事にこれから携わろうとしておられる方々が
管水路と開水路水理に関して持っていて頂きたい実用知識の範囲を示すことでした。
また、実務についているが、まだこの目標に到達していない方々の勉強の場をこの本の上で提供したい、と言う思いでした。
水理学は、土木工学においては、一般に難解な分野とされておりますが、この本をお読み頂けますれば、
必ずしもそうで無いということをお分かりいただけるでしょう。
本書は、2編より成り、引用や索引も別々に作られております。すなわち、例えば、第1編で取り上げられた事柄が第2編でさらに詳しく説明されているというようなことは、ありません。
水理学で扱う水路の流れは、時間的に変化しない流れ、すなわち定(常)流と逆に変化する、すなわち不定(常)流に大きく分けられます。
第2編の開水路の水理では、不定流の流れは、扱っておりません。その理由は、実務において開水路の不定流の流れを計算しなければならなくなるのは、
大河川における大水のピーク時のような特別な場面に限られており、本書の執筆目的の外の問題であると、考えたためであります。
なお、河川で起こる大水の流れの始まりから終わりまでは、水理学上でなく水文学的に計算することが出来ます。
それについては、拙著『河川管理のための流出計算法』(2014年築地書館刊)で扱われております。ご覧下さい。
本書の第1編の第1章は、管水路の流れと題し、流れが時間的に変化しない管水路の定流の流れを扱っています。
第2章においては、管水路における過渡的現象と題し、管水路の不定流の流れを扱っています。読者の皆さんは、
“過渡的現象”と言う言葉をこの本で初めて目にされるかもしれません。英語では“Transit Flow”と呼ばれます。
管水路においては、ある期間そこを流す水の量を一定に保ち、時間的に変化させない、と言うことを原則としています。
すなわち、ある期間ある一定の量の水を流し、次の期間は次の一定の量の水を流すのです。
そうすると、ある期間から次の期間のつなぎの期間が生じ、その期間で流れの量をある一定の量から次の一定の量に変化させるわけです。
この時の変化のさせ方如何で定流を流している時には考えられないような現象が起こります。
すなわち、この章は、この時の問題を取り扱っています。
第3章は、管水路の流量の測定の問題を扱っています。管水路の流れは、基本的に第4章の最後で扱われるバルブで流量が制御されている流れです。
流れを制御するためには、流れの量を測らなければなりません。その方法がこの章で述べられています。
最後の第4章では、水車、ポンプ、バルブの水理の問題が扱われています。一般に日本の水理学の本の中でこれ等の機器の水理を扱うことは、
あまりありません。特にバルブ(弁)に関しては、ほとんど有りません。しかし、実用水理学の世界では、大変重要な問題なのです。
第2編の第1章では、開水路の流れにおいては、定流の下でどのような水面形が発生し得るか、
そしてそれを考えるために必要な色々の基本的な事柄を状況に応じて述べています。そして、第2章以降では、
開水路で発生する定流の水面形の具体的な形、すなわち数値を与えるための方法を述べています。すなわち、第2章では、
長い区間に渡って水路断面が一定で変化しない場合に起こる等流と呼ばれる流れの計算方法について述べています。
第3章においては、堰・ダム越流頂・ゲート等の構造物のごく近辺で起こる大きく変化する流れ、
すなわち急変する不等流の水面形の計算の仕方を述べています。
第4章では、水路の断面が緩やかに変化する、すなわち暫変する区間で起こる暫変不等流と呼ばれる流れの水面計の計算の仕方を述べています。
最後の第5章では、低い水面から高い水面に突然飛び上がる跳水と呼ばれる水面形の計算の仕方を述べています。
巻末は、引用、参考図書、付録、索引という構成になっています。
この本を書くに当たって、入手出来た内外多くの水理学関係書を参考にさせていただきました。それらを、参考図書として、発行年代順に掲げています。
文による表現につきましては、多くの、個々の引用は省略させていただいております。特別の記述につきましては、全面引用させていただいております。
また、多くの図表や計算例を引用させて頂いております。しかし、その表示の仕方は、本文で行わず、巻末でまとめて扱っております。
子引き孫引きの結果、原典不明のもの、また不確かなものも相当数あります。
本書においては、出て来る数式の殆ど全てに対して、その使用の仕方を説明する計算例を示しています。
この計算例は、読者の理解を格段に深める、と思います。
本書では、新しく出て来た言葉を「カギ括弧」で囲み、最巻末の索引に載せ、併せてその全てに対し英語による表現を付しております。
国外での仕事の際、お役に立ちましょう。
なお、引用と索引は、第1編と第2編、付録と別々に作られております。
参考、引用させていただいている図書・文献を作られた方々に対して深い敬意と多大な感謝の意を、紙上ではありますが、表させていただきます。
最後に、本書の第2編は、1991年鹿島出版会より出版され、1999年に再版されました拙著『開水路の水理学解説』の内容を基礎にして執筆されております。
それを行うに当って同意を頂いた同会のご厚意に感謝の意を表させて頂きます。
この実用ハンドブックが読者にとっていささかなりとも役立つものであれば、大変幸せです。
平成28年4月
土木学会フェロー会員
元新潟大学教授
工学博士岡本芳美(をかもと・よしはる)