| 中澤まゆみ[著] 1,800円+税 四六判並製 288頁 2016年7月刊行 ISBN978-4-8067-1519-1 制度改定にともない、最新情報・データを掲載した待望の第2版。 「退院難民」・「介護難民」にならないために、 安らかな看取りを受けるために、 本人と家族がこれだけは知っておきたい 在宅医療と在宅ケアと、そのお金 老いは誰にでもやってくる。 そのときに必要な医療と介護―。 最期まで自分らしく生き、 自分らしく旅立つための在宅医療と在宅ケア。 その上手な利用の仕方を、徹底した取材と豊富な事例をもとに、 本人と介護家族のニーズでガイド。 |
中澤まゆみ(なかざわ・まゆみ)
1949年長野県生まれ。雑誌編集者を経てフリーランスに。
人物インタビュー、ルポルタージュを書くかたわら、アジア、アフリカ、アメリカに取材。
『ユリ─日系二世NYハーレムに生きる』(文藝春秋)などを出版した。
その後、自らの介護体験を契機に医療・介護・福祉・高齢者問題にテーマを移し、
『おひとりさまの「法律」』、『男おひとりさま術』(ともに法研)、
『おひとりさまの終活─自分らしい老後と最後の準備』(三省堂)、
『おひとりさまの終の住みか』(築地書館)を出版。
今回は、在宅医療と介護の現場に入り、徹底した取材で本書を執筆。豊富な事例をもとに、本人と家族のニーズでガイドした。
第2版 はじめに
第1章 いま、なぜ「在宅」なのか
自宅で死ねなくなった日本人
いま、なぜ「在宅医療」?
国が進める「在宅」時代
「看取り」が中心ではなかった在宅医療
認知症の人のQOLを支える在宅医療……私の場合
生きるための在宅医療……麻子さんの場合
看取るための在宅医療……幾代さんの場合
コラム 昌子さんの意見
第2章 「在宅ケア」を実現するための準備
退院から在宅療養をスムーズにつなげる
突然、退院してほしいと言われて
退院後のことは入院直後から
「退院支援」へと動き始めた病院
退院後の生活をどう支えるか
病気によって退院支援は変わる
リハビリが必要な人の自宅復帰支援
末期がんの人の自宅復帰支援
医療情報を病院からもらってくる
がんの相談はまず「がん診療連携拠点病院」で
緩和ケアについて知る
自宅での緩和ケア(在宅ホスピス)
認知症の人の自宅復帰は?
厚労省が方針転換した認知症ケア
地域で認知症をどう支えるか
退院前の話し合いは家族全員で
退院前に病院と話し合っておきたいこと
胃ろうを勧められたら
胃ろうはつける前に医師とよく相談を
退院後の行き先は、「転院?施設?それとも自宅?」
老人保健施設(老健)に入る
療養病床(医療型・介護型)に入る
介護付き有料老人ホームに入る
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に入る
コラム 勝さんの意見
第3章 在宅医療を始める
「在宅療養」を支えるネットワーク
春奈さんの帰還を支えたチーム
在宅医や訪問看護師をどう探す?
在宅医
在宅医療を支える在宅療養支援診療所
在宅医はどう選ぶ?
病院の医師と在宅医のちがい
在宅医はどんなことをするのか
在宅医の訪問は月1回もOKに
患者と家族が病院に望むこと
訪問看護
訪問看護には主治医の「指示書」が必要
訪問看護は医療保険?介護保険?
訪問看護師はどんなことをするのか
訪問リハビリテーション
リハビリとは尊厳の回復
在宅リハビリはどんなことをやるのか
理学療法士の仕事を見る
廃用症候群を防ぐリハビリ
訪問リハビリを行う療法士たち
リハビリも退院後は基本的には介護保険
保険適用もできるマッサージや鍼とは?
訪問歯科医
「口腔ケア」の2つの目的「食べられる口」は「生きられる口」
「食支援」はこんなふうに行う
訪問歯科医と「食支援」の利用料は?
訪問薬剤師
薬の専門家としての「在宅」への参加
コラム なぎささんの意見
第4章 介護保険を使いこなす
「介護」の準備、してますか?
まずは「要介護認定」の申請から
要介護度が認定されたら
本人仕様のケアプランとは
在宅療養を助ける介護サービス
医療の必要な人が通えるデイもある
3つの機能をもつ小規模多機能型居宅介護
ショートステイにも「医療型」が
介護保険には24時間対応のサービスもある
介護保険以外のサービスも上手に利用する
在宅ケアのお金のストレスを減らす
医療が必要になったときのお金
医療費が高額になってしまう場合には?
在宅ケアでは公的支援を賢く使う
65歳未満でも介護保険サービスが受けられる
自立支援医療制度を利用する
医療費を軽減する基本は「高額療養費制度」
高額療養費にもさらに裏ワザが
医療費と介護費を合算できる制度もある
医療費控除もこれだけ利用できる
コラム 真樹子さんのつぶやき
第5章 在宅ケアをスムーズに進めるために
家族の「介護力」と本人の「自分力」
在宅介護の最低条件は「食事」と「トイレ」
在宅ケアの6W2H
負担が集中しない「介護」とは?
福祉用具の力を引きだす相談員
介護保険で住宅環境を整えるには
寝たきりゼロへの10か条
「寝かせきりにしない」ための在宅ケア
褥そうはなぜできるのか
高齢者用の食事もさまざま
医療と介護をつなげる「連絡ノート」
「医療行為」ってどんなこと?
在宅で使われる医療機器
さまざまな栄養法と医療機器
コラム 侑子さんの意見
第6章 平穏な看取りを迎えるために
「平穏死」を望む時代
さまざまな在宅での「看取り」
病院での看取りになることも
在宅療養患者の8割は認知症?
認知症で大切なのは薬の整理と管理
認知症の人の終末期をどう支えるか
がんの看取り
がんのターミナルとは?
自宅看取りのこころがまえ
家族で一緒にエンゼルケアを
救急車を呼ばないで
おひとりさまでも「最期まで在宅」は可能か
最期の味方はホームホスピス?
事前指示を忘れずに
事前指示は具体的に
第1版 あとがき
付録 資料編
1.介護
介護サービスとその費用
居宅介護サービス
施設介護サービス
新しい総合事業(介護予防・日常支援総合事業)
介護保険外のサービス
介護にも「高額介護サービス費」がある
2.医療
医療費軽減のために利用できる制度
高額療養費制度
入院時食事療養費で、食事代が減額に
難病などの特定疾患には、医療費の助成が
福祉制度を利用して助成を受ける
障害者手帳を取る
自立支援医療制度を利用する
無料低額診療制度という制度も
3.医療と介護
高額医療・高額介護合算制度
4.在宅医療と診療報酬
訪問診療にかかるお金
訪問看護にかかるお金
訪問リハビリテーションにかかるお金
国の医療政策が、「病院から在宅へ」「施設から在宅へ」と変わった。
平たく言えば、患者の入院期間を短縮してできるだけ早く自宅に戻し、医療の必要な人には通院か在宅療養をしてもらい、
できれば看取りも自宅でしてもらおうというものだ。私もその一員である団塊の世代が、膨らみゆく国の医療費と介護費を背に、
あと10年で後期高齢者の仲間入りをし、やがて介護が必要となって看取りに向かっていく「大介護時代」「多死社会」の到来がその背景にある。
私のような「おひとりさま」や、老々介護がますます増えている時代。
「病気になったらどうなるのか」「退院後はどこへ行けばいいのか」「どこで看取ってもらえるのか」と、不安を抱える人は多い。
「退院難民」「介護難民」になる不安をあちこちで耳にする。
いっぽう、「旅立つときにはわが家から」と願う人も増えている。「最期まで在宅」なんてそう簡単にいかない、
と思っている人も、「条件が整えば?」と聞くと、「それはやっぱり、病院や施設よりは……」と本音をもらす。
とはいえ、親の介護でもしない限り、まだまだ元気な60代や70代では自分が介護のお世話になることも、
ましてや看取りを考えることも、なかなか現実的にはなりにくい。実際、80歳前の8割以上は介護を受けていない元気高齢者だ。
しかし、80歳を超えると3割、6割……と介護を受ける人の割合は増加する。
そして介護を受けるきっかけになるのは、不意の病気や長年抱えてきた病気の悪化、骨折や足腰の関節の老化や認知症。
これまで健康自慢だった人にも「病院」の存在が身近になってくるのは、自分の親を見てもよくわかる。
患者や家族の意識が少しずつ変わってきたとは言うものの、いまだに高齢者の療養の場も看取りの場所も、中心になるのは病院だ。
病院は本人にとっても家族にとっても、いろんな意味で安心できる場所だが、そこに長居をしたいかといえば、
「できれば自宅に戻りたい」というのが、病人の本音だろう。
医療と介護の間には深くて大きな河がある……。
病気をもつ人が自宅に戻るためには、医療と介護がつながった「在宅ケア」の受け皿が必要となる。
ところが、介護はともかく医療については「在宅」を支える仕組みがなかなかできてこなかった。その河をつなぐ橋として登場してきたのが在宅医療だ。
12年前、ある日突然、介護者の仲間入りをした私も、河の広さと深さに茫然とした。
優秀なケアマネジャーと出会い、介護スタッフには恵まれたが、医療に関しては右往左往の連続だった。
ケアを受ける本人は介護も医療も両方必要としているのに、どうしてこれほど、医療と介護がつながっていないのだろうと、地団太踏んだ。
「平穏死」が注目されたり、テレビ、新聞などでの報道もあって、
中高年のあいだでは「在宅医療」という言葉はだいぶ浸透してきたようだ。
「家で生きて家で死にたい」人を支える在宅医や訪問看護師が書いた本も、数多く出版されている。
だが、「在宅医療」とは何なのか、どんなものがあるのか、どんなふうに利用することができるのか、
どこでその情報を手に入れたらいいのか……といった、医療や介護の利用者側の素朴な疑問に答えてくれるものが、まだまだ少ないように思った。
そこで、「退院」から自宅療養、在宅看取りまでの支援について、在宅医療を含めた「在宅ケア」という視点をすえ、
当事者目線でガイドしてみようと考えた。介護を受け始めてから「看取り」までには長い療養の期間がある。
そうした流れを理解できるよう、私の介護体験、在住する世田谷区の区民の会での活動、
登録ヘルパーとしての体験に加え、アンケートによる在宅ケアの現状リサーチ、在宅医・訪問看護師などへの同行と介護家族への取材を通して書くことにした。
今回は、これから「多死」が大きな問題になる東京での取材が中心となった。
高齢者ケアを支援する社会資源には、地域格差がある。都会と地方では事情もちがうし、抱える問題・課題もちがうので「ご当地モデル」が必要だが、
在宅ケアを支えるのに必要な仕組みは基本的には変わらない。
各地にはすばらしい「在宅モデル」もある。高齢者ケアを支える社会資源には施設・高齢者住宅もあるが、
これについては別著『おひとりさまの終の住みか』でまとめた。
この本を書くにあたっては個人的理由もあった。私には3人の看取りが待っている。
実家で老々生活を営む両親はともに92歳。それに加えて私が介護者である81歳の認知症のおひとりさま女性。
この3人を安らかに看取り、おひとりさまである私が自分らしく死んでいくためには、知識と知恵とこころの準備、
そしてそれを支えてくれるネットワークが必要だ。
介護中の家族ばかりではなく、これから家族と自分の介護を控えた「予備軍」、
さらには私のような「おひとりさま」にも、自分らしい人生の「終活」の一端として役立てていただければと願っている。
初版を2013年春に出して以来、版を重ねてきたが、この間、介護保険と医療保険制度を取り巻く状況が大きく変わった。
そこで、制度の改定、変更部分に全面的に修正を加え、第2版を刊行することとした。
これからは制度を知って使いこなすことがますます重要になってくる。その手助けの一端になれば嬉しい。
2016年5月 著者