| 権田雅之+深山直子+山野博哉[編著] 1,500円+税 四六判並製 152頁+カラー口絵8頁 2015年8月刊行 ISBN978-4-8067-1499-6 標高300mを超える山をもち、米どころとしても知られた自然と文化豊かな久米島。 島の住民とともに、WWFジャパンや国立環境研究所等が取り組んだ3年間の環境保全活動を追った一冊。 |
権田雅之(ごんだ・まさゆき)
1973年、愛知県春日井市に生まれる。
1996年、日本大学農獣医学部畜産学科(当時)卒業。
2000年、オーストラリア、ニューイングランド大学環境管理学修士課程修了。
現在、公益財団法人世界自然保護基金(WWF)ジャパン自然保護室南西諸島プロジェクト担当。
深山直子(ふかやま・なおこ)
1976年、東京都に生まれる。
2000年、慶應義塾大学文学部史学科卒業。
2008年、東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程単位取得退学。博士(社会人類学)。専攻は、社会人類学、オセアニア地域研究、先住民研究、沖縄研究。
現在、東京経済大学コミュニケーション学部准教授。
山野博哉(やまの・ひろや)
1970年 兵庫県に生まれる。
1994年 東京大学理学部地学科地理学課程卒業。
1999年 東京大学大学院理学系研究科地理学専攻修了。博士(理学)。専攻は、自然地理学・サンゴ礁学。
現在、国立研究開発法人国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター長。
共著書に『日本のサンゴ礁』(自然環境研究センター)、『サンゴ礁学』(東海大学出版会)、『Coral Reef Remote Sensing』(Springer)など。
(所属はプロジェクト開始時、 または一部終了時点を含む)
権田雅之、安村茂樹、上村真 仁:(公財)世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)
山野博哉、林誠二、浪崎直子、 石原光則:(独)国立環境研究所
深山直子:東京経済大学
仲宗根一哉、金城孝一:沖縄県衛生環境研究所
藤田喜久:琉球大学・NPO法人 海の自然史研究所
長田智史:(一財)沖縄県環境科学センター
木村匡 :(一財)自然環境研究センター
星野奈美:(株)ホシノナミ
三神良之:(株)NIJI
古瀬浩史:(株)自然教育研究センター
はじめに
第1章 久米島の姿
島の成り立ち──火山とサンゴ礁の島 山野博哉
島の生き物──島で進化した動植物たち 山野博哉
【コラム1】ラムサール条約
島の歴史 深山直子
【コラム2】稲作行事
島の暮らし 深山直子
第2章 人と自然のかかわり
土地利用と農業の変遷 深山直子
【コラム3】棚田
【コラム10】動物に「島の名」をつける
住民の自然環境に関する認識 浪崎直子・深山直子
第3章 「久米島応援プロジェクト」とは 権田雅之・安村茂樹
【コラム6】パンダのマークのWWF
第4章 地域を知る
赤土流出の歴史 山野博哉・深山直子
赤土と生き物 藤田喜久・仲宗根一哉・金城孝一
赤土流出の実状把握 林誠二
対策に向けて 仲宗根一哉・金城孝一・林誠二
【コラム7】SPSS測定法
【コラム8】久米島の宝、ナンハナリ沖のサンゴ大群集
【コラム9】サンゴ大群集のその後
【コラム10】動物に「島の名」をつける
住民の自然環境に関する認識 浪崎直子・深山直子
第5章 地域コミュニティとのかかわり
久米島町役場 権田雅之
【コラム11】グリーンベルト植え付け種、ベチバー
地元団体 権田雅之
【コラム12】久米島の泡盛「美ら蛍」
【コラム13】久米島ホタル館
学校・教育機関 浪崎直子・権田雅之
【コラム14】環境教育と「おじいショック」
【コラム15】これからの環境教育
農家・農業団体 権田雅之
【コラム16】農家の高齢化
地域への普及活動と環境に対する認識調査 浪崎直子
【コラム17】住民へのアンケート
第6章 「久米島応援プロジェクト」を振り返って
地域との協働 浪崎直子・深山直子
プロジェクトメンバーの感想 権田雅之・深山直子
【コラム18】人口減少
第7章 久米島のこれから 権田雅之・深山直子・山野博哉
【コラム19】観光
【コラム20】サンゴ礁保全推進協議会
【コラム21】海洋深層水
【コラム22】クルマエビ養殖
謝辞
参照文献
沖縄の島々に見られる代表的な風景といえば、サンゴ礁に縁取られた青く美しい海が、まず思い起こされるのではないでしょうか。
沖縄の文化の豊かさは、こうした沿岸から陸へとつづく特異な自然環境のなかに人々が暮らすことによって、長い時間をかけて築かれてきました。
これらの島々には、地史的に長く隔離されたことの証として、数多くの固有種が生息している一方で、様々な開発行為や環境汚染が、
それらの生物に影響を及ぼしていることが明らかになってきています。
本書は、久米島という小さな島を取り上げてその魅力を伝えるとともに、沖縄全域の課題である赤土の流出問題に対し、
この離島を舞台に私たちが取り組んだ活動、「久米島応援プロジェクト」の紹介を目的としています。
本書では、まず、久米島の自然環境と人々の歴史や暮らしを紹介した上で、近年深刻化している赤土と呼ばれる土砂の流出による環境への影響を解説します。
続いて、この赤土の流出問題に対して、島外の専門家集団がどのような調査と分析を行い、その結果を踏まえて地域の役場や保全団体等と共に、
問題の解決に向けてどのような働きかけをしたのか、ということを具体的に明らかにします。最後に、「久米島応援プロジェクト」の成果と課題を、
プロジェクトのメンバーの視点はもとより、島の住民の視点も交えながら報告します。
本書が読者のみなさんにとって、沖縄の自然に興味を持ち、足を運ぶための後押しとなるだけでなく、
日頃何気なく消費している農産物をとりまく様々な課題を考えるきっかけとなれば幸いです。
また、全国各地において様々なかたちで環境保全にかかわっている方々が、私たちの活動や経験をヒントにして、さらなる活動や議論を展開して頂ければ、
編著者らのねらいは十分に達成されたといえましょう。
権田雅之
深山直子
山野博哉