| ウィリアム・ジュリー+ロバート・ホートン[著]取出伸夫[監訳] 井上光弘+長裕幸+西村拓+諸泉利嗣+渡辺晋生[訳] 4,200円+税 A5判上製 392頁 2006年3月刊行 ISBN978-4-8067-1324-1 地下水汚染、土壌汚染といった環境問題。 砂漠化、雨水資源化などに関連して、ますます重要性の増す名著。 世界中で広く教科書、実用書として用いられてきた「SOIL PHYSICS」の改訂第6版。 土中の物質移動の基礎理論を、多くの例題を通して、体系的に学ぶことができる。 また最新の研究、今後の課題についても幅広く論じた、 土壌科学をはじめ、関連する農学、林学、陸水学、地下水学、地盤工学、環境工学の学生、技術者、専門家に適した一冊。 訳者による「追加資料」「正誤表」などをこちらで更新しております。2014年刊行の3刷において、正誤表1刷・2刷分は訂正済みです。↓ http://www.bio.mie-u.ac.jp/junkan/busshitsu/lab5/soilphysics/ |
ウィリアム・ジュリー(William A.Jury)
カリフォルニア大学リバーサイド校環境科学科教授。
主に土中および地下水中の水分、化学物質の移動に関する多数の科学論文や著書がある。
アメリカ土壌科学会、アメリカ地球物理学会フェロー。
ロバート・ホートン(Robert Horton)
アイオワ州立大学農学科教授。
圃場の熱収支、土中の物質移動に関する多数の科学論文がある。
アメリカ土壌科学会、アメリカ農学会フェロー。
<監訳者>
取出伸夫(とりで・のぶお)
1984年 東京大学農学部農業工学科卒業
1990年 東京大学大学院農学系研究科博士課程修了
1991年 アメリカ農務省U.S.Salinity Laboratory 研究員
1995年 佐賀大学農学部助教授
2004年 三重大学生物資源学部教授
2006年 三重大学大学院生物資源学研究科教授
専門 土壌物理学
<訳者>
井上光弘(いのうえ・みつひろ)
1969年 九州大学農学部農業工学科卒業
1971年 九州大学大学院農学研究科修士課程修了
1972年 鳥取大学農学部助手
1988年 鳥取大学農学部助教授
1990年 鳥取大学乾燥地研究センター助教授
2008年 鳥取大学乾燥地研究センター教授
2012年 鳥取大学特任教授(名誉教授)
専門 土壌物理学,乾地土水管理学
長裕幸(ちょう・ひろゆき)
1977年 九州大学農学部農業工学科卒業
1979年 九州大学大学院農学研究科修士課程修了
1980年 九州大学大学院農学研究科博士課程中退
1980年 佐賀大学農学部助手
2003年 佐賀大学農学部助教授
2007年 佐賀大学農学部准教授
2009年 佐賀大学農学部教授
専門 土壌物理学,土壌水文学
西村拓(にしむら・たく)
1987年 東京大学農学部農業工学科卒業
1989年 東京大学大学院農学系研究科修士課程修了
1991年 東京大学農学部助手
1997年 東京農工大学農学部地域生態システム学科講師
1999年 東京農工大学農学研究科国際環境農学専攻助教授
2013年 東京大学大学院農学生命科学研究科教授
専門 土壌物理学,土壌保全学
諸泉利嗣(もろいずみ・としつぐ)
1986年 京都大学農学部農業工学科卒業
1990年 京都大学大学院農学研究科修士課程修了
1990年 北里大学獣医畜産学部助手
1999年 岡山大学環境理工学部助教授
2005年 岡山大学大学院環境学研究科助教授
2010年 岡山大学大学院環境学研究科教授
専門 土壌水文学,土壌物理学
渡辺晋生(わたなべ・くにお)
1994年 三重大学生物資源学部生物資源学科卒業
1996年 北海道大学大学院地球環境科学研究科博士前期課程修了
1999年 三重大学大学院生物資源学研究科博士後期課程修了
2001年 三重大学生物資源学部助手
2003年 三重大学生物資源学部助教授
2007年 三重大学大学院生物資源学研究科准教授
専門 土壌物理学,凍土学
まえがき
訳者まえがき
第1章 土の固相 (西村拓,渡辺晋生)
1.1 1次構成粒子の性質
1.1.1 粒径の測定
1.1.2 土性区分
1.1.3 粒径分布
1.1.4 化学的,鉱物学的性質
1.1.5 土粒子の形
1.1.6 土粒子の表面積
1.1.7 粘土粒子表面の性質
1.1.8 粘土の凝集と膨潤
1.2 混合物としての土の性質
1.2.1 体積区分
1.2.2 乾燥密度と土粒子密度
1.2.3 土の層位
1.2.4 土の構造
1.2.5 土の強度
1.2.6 クラストの形成
問題
第2章 土中の水分保持 (井上光弘,西村拓)
2.1 水の性質
2.1.1 水分子の性質
2.1.2 流体の水の性質
2.1.3 粒子表面近傍の水
2.2 土中水分量
2.2.1 定義
2.2.2 土中水分量の直接測定
2.2.3 電磁放射法による体積含水率の間接測定法
2.3 土中水のエネルギー状態
2.3.1 土中水のポテンシャルエネルギー
2.3.2 基準または標準状態
2.3.3 全土中水ポテンシャル
2.3.4 土中水ポテンシャルの成分
2.4 平衡系の解析
2.5 水ポテンシャルの各成分の測定
2.5.1 ポテンシャル成分の直接測定
2.5.2 測定装置
2.6 水分特性関数
2.6.1 測定
2.6.2 水分量-エネルギー関係のヒステリシス
問題
第3章 土中の水分移動 (西村拓,井上光弘)
3.1 毛管内の水の流れ
3.1.1 ポワズイユ則
3.2 飽和土中の水分流れ
3.2.1 ダルシー則
3.2.2 飽和透水係数の測定
3.2.3 土カラム内の圧力分布の計算
3.2.4 飽和成層土中の水の流れ
3.3 不飽和土中の水の流れ
3.3.1 バッキンガム--ダルシーのフラックス則
3.3.2 不飽和透水係数
3.3.3 不飽和透水係数の毛管モデル
3.3.4 定常な水の流れの問題
3.3.5 水の保存則
3.3.6 非定常流れのリチャーズ式
3.3.7 モデルの関数形
3.3.8 非定常流の計算
問題
第4章 自然条件下での水の流れ (長裕幸,西村拓)
4.1 空間変動と移動現象
4.2 圃場の水収支
4.2.1 圃場の水分量とマトリックポテンシャル分布の解析
4.3 浸潤
4.3.1 浸潤モデル
4.3.2 降雨が制限要因の浸潤
4.3.3 成層土における浸潤
4.3.4 浸潤の測定
4.3.5 水と溶液の選択流
4.3.6 2次元および3次元の浸潤
4.4 再分布
4.4.1 土の断面における水分の再分布
4.4.2 再分布における不安定な流れ
4.5 不飽和透水係数の圃場測定
4.6 蒸発
問題
第5章 土の熱現象 (諸泉利嗣,渡辺晋生)
5.1 大気のエネルギー収支
5.1.1 大気圏外放射
5.1.2 太陽放射
5.1.3 太陽放射に影響を与える物理的要因
5.2 地表面エネルギー収支
5.2.1 エネルギー収支式
5.2.2 蒸発散量の測定
5.3 土中の熱の流れ
5.3.1 熱フラックス式
5.3.2 熱の保存則
5.3.3 土の熱的性質
5.3.4 熱移動式の応用
5.3.5 地温観測
5.3.6 熱を利用した土の物理的性質の決定
問題
第6章 土の通気 (渡辺晋生,諸泉利嗣)
6.1 土中空気の組成
6.2 土中のガス反応
6.2.1 土中のCO2の生産
6.2.2 土中のO2の消費
6.3 土中のガス移動
6.3.1 ガスの保存則
6.3.2 土中のガス対流
6.3.3 ガス拡散
6.3.4 土中のガス拡散係数の測定
6.3.5 ガス移動式
6.4 土中のガス移動のモデル化
6.4.1 定常状態におけるO2の移動と消費
6.4.2 定常状態および非定常状態におけるCO2の移動と発生
6.4.3 植物根表面でのO2の消費
6.5 土中の水蒸気の流れ
6.5.1 水蒸気フラックス式
6.5.2 水蒸気フラックス則の近似
6.5.3 水蒸気フラックスに対する浸透圧の効果
6.5.4 水蒸気フラックスに対する濡れ易さの効果
6.6 土中のO$_2$の拡散と消費の測定
問題
第7章 土中の化学物質の移動 (取出伸夫)
7.1 化学物質の保存則
7.1.1 土中の化学物質の貯留
7.1.2 土中の化学物質のフラックス
7.1.3 土中の多相にわたる化学反応
7.1.4 水理学的分散の移流分散モデル
7.2 化学物質の移動式
7.3 移流分散式
7.3.1 非反応性で非吸着性な溶質の移動
7.3.2 非分解性の吸着性化学物質の移動
7.3.3 土の構造の物質移動に対する効果
7.3.4 土中の化学物質の反応
7.3.5 土中の揮発性有機化合物の移動
7.3.6 非定常な水の流れによる溶質移動
7.3.7 次元解析
7.4 土中の溶質移動の伝達関数モデル
7.4.1 伝達関数による溶質移動
7.4.2 伝達関数式
7.4.3 分布関数モデル
7.4.4 確率的移流伝達関数モデル
7.4.5 モデルのパラメータの推定
7.5 圃場における溶質管理
7.5.1 根群域の塩類化
7.5.2 地下水汚染
問題
付録 土の特性の空間変動の解析方法 (諸泉利嗣,井上光弘)
A.1 土の特性の変動性
A.2 確率の概念
A.2.1 確率変数と領域変数
A.2.2 度数分布
A.3 度数分布の解析
A.3.1 確率密度関数のモデル
A.3.2 度数分布の決定法
A.3.3 平均値の信頼限界
A.4 空間構造の分析
A.4.1 バリオグラム
A.4.2 自己相関関数
A.4.3 クリッジング
A.4.4 ドリフト
問題
問題の解答
参考文献
記号
索引
1991年に本書の第5版が出版されて以来、土壌物理学の研究はいくつかの点で大きく変化した。
コンピューターの計算速度と記憶容量は、この13年間に飛躍的に向上した。
その結果、数値解析が土中の物質移動問題に対する標準的な手法となり、2次元、3次元問題に対しても利用されている。
そして、モデルのパラメータ推定や妥当性の確認、仮説の検証に対する新しい手法としても利用されるようになった。
さらに、土中の対象を測定したり観察するために、多くの先端技術を用いた装置の改良や開発が行われた。
たとえば、土の構造を乱さずに伝達する電磁波放射の利用などである。
一方、この10年間に、土壌物理学の基礎の重要性も再び見直されている。
さらに、水や化学物質の選択流に関する研究が増加し、特にモデルが進歩した。
農業や環境保全に関連する現実の問題への土壌物理学の適用は拡大を続けており、実験室から野外圃場へと研究の重点は移っている。
この変遷は、土の性質の空間的、時間的変動が規模の大きなスケールにおける平均的な移動現象に及ぼす影響を明らかにするために、
新しい研究の題材を生んできた。
第6版においては、こうした研究の変化に対応するために、大きな改定を行った。
第5版と同様に、土中の物質移動問題に焦点をあて、読者が問題を解くことで、特定の問題に対する普遍的な理論の単純化を学べること目指した。
この手法を、経験則ではなく、物理的な法則に基づき体系的に発展させ、本書を通して具体的な説明を心がけた。
70以上の例題により、実際の問題に対する理論の適用法を読者に示す。
さらに第6版では、67の章末問題に対して詳細な解答を示した。
その他の第5版からの主な改定点は、移動現象に対する数値計算の例を多く示したこと、選択流を新たな項目として加えたこと、
土中の観察や測定に対する実験方法をより詳しく解説したこと、土の構造と特性の重要性を強調したことである。
本書は、学部学生の発展的な学習や、大学院生の教科書として適している。
また、専門家の参考書としての利用も考慮した。
第1章では、土の固相の物理的、化学的な性質の重要性を説明する。
そして、農業における土の固相の重要性に加えて、物質移動、水分や養分の保持、水、熱、ガス、溶質の変化に大きく関係する固相の性質を強調する。
第2章では、まず、土中水を分子レベル、流体としての水の観点から説明し、水のポテンシャルエネルギーについて熱力学的な解説を行う。
そしてポテンシャル成分と土中水の測定装置との関係を、平衡の原理を用いて定量的に説明する。
第3章、第4章は、飽和土、不飽和土の水分移動の理論を導入し、多くの水分移動の近似モデルを紹介する。
第5章から第7章は、土中の熱、ガス、溶解した化学物質の移動を解説し、野外圃場で生じる現実的な問題を強調する。
付録では、空間的に分布する土の性質を評価する方法を取り扱う。
そして、最後に章末問題の解答を示す。本書における題材は、筆頭著者がカリフォルニア大学リバーサイド校において、
長年にわたり行ってきた土壌物理学の講義を基にしている。
多くの学生から講義で用いた本書の原稿に対して有益な助言を受け、多大な貢献を頂いた。
2004年2月
William A. Jury
Riverside, California
Robert Horton
Ames, Iowa
本書は、1940年にBaver博士により初版が刊行され、その後1948年に第2版、1956年に第3版とBaver博士自身により改定を重ねた。
それらは、我が国の土壌物理学研究の創始者たちに対しても、多くの影響を与えた名著である。
1972年には、W.H.Gardner博士、W.R.Gardner博士によって第4版となり、土中の水分移動現象により一層の焦点が当てられた。
さらに1991年にJury博士によって第5版として改定され、土中の溶質移動が加わり、
また実験室から野外圃場への研究対象の変遷にふさわしい内容となった。
そして第6版では、Horton博士が共著者に加わり、内容の充実に加えて、最新の研究動向も加筆された。
改めて旧版から第6版の変遷を振り返ると、本書が土壌物理学の発展と共に歩んできた歴史を痛感させられる。
Jury博士は、物理学を専攻した後、W.R.Gardner博士の指導で砂中の水蒸気移動に関する博士論文に取り組くんだのを契機に土壌物理学の世界に入った経歴を持つ。
常に独自の理論を展開し、土壌物理学における理論家として指導的な役割を果たしている研究者である。
カリフォルニア大学リバーサイド校では、長年、圃場の溶質移動問題に精力的に取り組んだ。
そして、伝達関数(トランスファーファンクション)の概念を導入し、均一な土に広く用いられる移流分散式(CDE)の対極をなす新しいモデルとして、
溶質混合の生じない移流対数正規伝達関数(CLT)モデルを提案した。
また工学的なセンスにも富み、農薬に見られる揮発性化合物に対して、単純な仮定でその振る舞いを予測するスクリーニングモデルを提案した。
これらの独自の概念の詳細が解説されている点も本書の特徴である。
本書には、土壌物理学の基礎から最近の研究動向にいたるまで、幅広い題材が盛り込まれている。
そのため、おそらく3通りの利用法があると思われる。土壌物理学の講義を受けている学部学生は、
講義で学んだことをさらに高めるために、基礎理論の解説を中心に物理的背景を学ぶことができる。
時間の限られた学部の講義においては、講義の説明を補う目的で利用すれば効率的であろう。
土壌物理学を専攻する大学院生は、各章の例題、章末問題をすべて解くことで、幅広い土壌物理学の知識を身につけ、
物理的な理論の実際の問題への適用方法を学ぶことができる。
さらに発展的な利用としては、最新の研究動向に基づき今後の研究を考える目的にも利用できる。
本書には、限られた紙面の中での簡略な表現ではあるが、Jury博士の研究に対するメッセージが多く含まれている。
翻訳にあたっては、そうした著者の意向が正しく伝わるように細心の注意を払ったつもりである。
通常はあまり多くの題材を盛り込むと、特に初級者にとっては難解な本になりがちであるが、本書においては、各節の意図は容易にわかるので、
自分の目的に応じて選択しながら読むことは、読者にとって困難ではないと思われる。
翻訳は、土壌物理学を専門とする6名で分担して行った。我々は、農業土木学会土壌物理研究部会HYDRUSグループとして、
本書でも用いられている土中水分・溶質移動予測プログラムHYDRUSや溶質移動解析プログラムSTANMODの開発や改良に参加しながら、我が国における普及も目指している。
それぞれが大学で担当している土壌物理学関連の講義に加えて、そうした汎用プログラムの普及活動を通じて、
本書の内容を正しく伝える必要性を痛感したことが、この翻訳を行った理由である。
原則としては各章を2名で担当し、相互に確認しながら作業を進めた。
その上で、取出、渡辺が本全体の統一を図り、最終段階では、訳者全員での議論を重ねた。
疑問点、修正すべき点に関しては、第5版以前の原著との比較検討やJury博士への問い合わせ等により本書の完成度を高めた。
そして、随所に訳者の脚注を付記した。翻訳作業には、我々6名に加えて、それぞれの大学の大学院生を中心に多くの協力を頂いた。
鳥取大学乾燥地研究センターの望月秀俊氏には第2章、三重大学土壌圏循環学の坂井勝氏には全体にわたる協力を頂いた。
また元茨城大学教授の岩田進午氏には、本書の出版にあたり多くのご配慮とご尽力を頂いた。
なお、本書の英文タイトル「Soil Physics」に対しては、対応する学問分野名の「土壌物理学」を当てた。
我が国においても、土壌物理学の応用は、農地における水管理からより広く土の環境問題へと広がっている。
そのため、必ずしも植物生育の場としての「土壌」のみが対象でないことを考慮して、「soil」は原則として単に「土」と表記し、
「土壌」は「土壌物理学」等の学問名に限り用いた。
また、この翻訳における新しい試みとして、本書を学ぶために有用な情報を三重大学生物資源学部土壌圏循環学研究室のホームページに公開した
(http://www.bio.mieu.ac.jp/junkan/sec1/lab5/soilphysics/)。
例題や章末問題等の追加資料、原書の正誤表、本書で用いられているHYDRUSとSTANMODの入出力ファイル等が利用できる。
さらに質問や意見交換ができる場として発展させ、読者と共に土壌物理学を学ぶための資料の充実を図る予定である。
本書が、我が国における土壌物理学のさらなる発展の一助となることを願う次第である。
2006年1月
訳者を代表して
三重大学生物資源学部
取出伸夫
2006年3月に刊行された本書は、2009年10月に2刷、そして今回、3刷として継続されるに至った。原書の第6版が出版されてからの10年間、コンピューターによるシミュレーションはさらに身近になり、土中の物質移動の予測は、より広く様々な分野から求められるようになった。しかし、現在においても、土壌物理学の基礎としての本書の位置づけと役割は変化していないと思われる。とりわけ我が国においては、2011年3月の福島第一原子力発電所事故以来、放射性物質による土壌汚染に対する土壌物理学の貢献が強く期待されている。本書に示される基礎理論を、科学的に正しく適用していくことが、土壌物理学の社会的な使命であろう。
土壌物理学を教える大学においては、この10年間で理系学生の物理離れはさらに進んでいる。一冊を通して学ぶことにより、幅広く物理学のおもしろさを感じることのできる本書の構成は、これから土壌物理学を学ぶ学生にとっても適した教科書であると考える。三重大学土壌圏循環学研究室の本書のホームページの情報、資料を利用すると、さらに深く学ぶことができるので、是非利用して頂きたい。なお、原著も含めた本書の誤りは可能な限り修正した。この場を借りて、貴重なご意見を頂いた読者の方々にお礼を申し上げます。
2014年6月
三重大学大学院生物資源学研究科
取出伸夫
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